ダイムラー・ベンツは1965年のフランクフルト・ショーにおいて、1959年発売のW111型セダン(通称フィンテール)に代わる新型4ドアセダン、W108/109型「250/300」シリーズを発表しました。テールフィンが廃止されモダンなスタイリングに変貌した他、追ってV8エンジン搭載車が追加されるなどプレミアム志向が強められました。
基本メカニズムを踏襲
W111型同様、標準仕様とロングホイールベース仕様が用意されるボディのサイズは、全長4,900mm(標準仕様)/5,000mm(ロングホイールベース仕様)×全幅1,810mm×全高1,440mmで、W111型から全長が25mm、全幅が15mm拡大された一方、全高は60mm低いモダンなプロポーションとなりました。ホイールベースに変更はなく、標準仕様が2,750mm、ロングホイールベース仕様が2,850mmでした。
又、フロント:ダブルウィッシュボーン式/リア:スイングアクスル式のサスペンション形式や、リサーキュレーティング・ボール式のステアリング形式、FRの駆動方式など多くの基本メカニズムが踏襲された一方、ブレーキはW111型では上級グレードのみの採用に留まった4輪ディスク式が全車に標準化されました。
搭載エンジン及びグレード体系は、当初2.5L直6SOHCツインキャブレター仕様(最高出力130ps/最大トルク19.8kgm)搭載の「250S」、同燃料噴射仕様(最高出力150ps/最大トルク22kgm)搭載の「250SE」、3L直6SOHC燃料噴射仕様(最高出力170ps/最大トルク25.4kgm)搭載の「300SE」、そしてそのロングホイールベース版「300SEL」の4タイプが用意されました。
トランスミッションは、従来同様4速MT又は4速トルコン式ATが組み合わせられました。又、パワーステアリングが300SE/SELに標準装備され、250S/SEにはオプションで用意されました。そして1968年1月に、2.8L直6SOHCツインキャブレター仕様エンジン(最高出力140ps)搭載の「280S」と、同燃料噴射仕様エンジン(最高出力160ps)搭載の「280SE」「280SEL」が追加されました。
「600」用V8エンジン搭載車を追加
同時に250SE/300SEがカタログ落ちした他、300SELはエンジンが2.8L燃料噴射仕様に置換されると共に、エアサスペンションが装備されました。更に同年6月には、300SELをベースにフラッグシップセダン「600」用の6.3L V8SOHCエンジン(最高出力250ps/最大トルク51kgm)を搭載し、4輪ベンチレーテッド型ディスクブレーキやエアコンなどを装備した「300SEL6.3」が追加されました。
次いで1969年、同じく300SELのボディに3.5L V8SOHCエンジン(最高出力200ps/最大トルク29.2kgm)を搭載する「300SEL3.5」が追加され、250Sはカタログ落ちしました。続いて1970年には、同エンジン搭載のロングホイールベース版廉価グレード「280SEL3.5」と、標準ホイールベース版「280SE3.5」が追加された一方で、300SELが廃止されました。
更に1971年、4.5L V8SOHCエンジン(最高出力225ps/最大トルク38.5kgm)を搭載する「280SE4.5」「280SEL4.5」「300SEL4.5」がラインナップに加わり、280SELがカタログ落ちした為、全車V8エンジン仕様となりました。そして1972年、初代「Sクラス」(W116型)にバトンタッチして生産終了となりました。