ジャガー・カーズは1988年10月に開催されたバーミンガム・モーターショーにおいて、最高速度220mph(352km/h)を目指したプロトタイプ・スーパーカー「XJ220」を出展しました。チーフエンジニアであったジム・ランドルが同僚と共に自主的に開発を初めた事が発端で、これを当時の社長であったジョン・イーガンが容認し正式なプロジェクトとなった経緯がありました。
プロトタイプからエンジンと駆動方式を変更
2シーター・フィクスドヘッドクーペ型のボディは、アルミニウム素材を用いたモノコック構造と、電動カバー付ヘッドランプ及び可変式フロントスポイラー採用の流麗なスタイリングを備えていました。ボディ・ディメンションは、全長4,860mm×全幅2,000mm×全高1,150mm、ホイールベース2,640mmで、同じ年にデビューを飾った「フェラーリ・F40」と比較すると一回り大柄でした。
サスペンション形式は、フロントにダブルウィッシュボーン/コイル式、リアにダブルウィッシュボーン・コントロールリンク/コイル式が採用されました。プロトタイプに搭載されたエンジンは、往年のコンペティションモデル「XJ13」用の5.3L V12DOHCをベースに排気量を6.2Lまで拡大したものでした。駆動方式は、このユニットをミッドにマウントし4輪を駆動するフルタイム4WD方式でした。
しかし、それから3年が経過した1991年秋の東京モーターショーに出展された市販バージョンのエンジンは、ジャガーとTWRの合弁企業であるジャガー・スポーツが開発したグループCコンペティションカー「XJR10/11」に搭載された3.5L V6DOHC24Vツインターボチャージドのデチューン版(最高出力550ps/7,000rpm・最大トルク65.7kgm/4,500rpm)に変更されていました。
世界最高水準の性能を実現
又、駆動方式も後輪駆動(MR方式)に改められていたものの、5速MTを介して1,375kgの車体を最高速度347km/hまで引っ張り上げ、0-100km/hを3.9sで駆け抜ける性能を備えていました。このパフォーマンスは、フェラーリ・F40の最高速度324km/h・0-100km/h加速4.1sを凌ぎ、殊に最高速度に関してはロードカーとして世界最速を誇りました。
ブレーキは、この動力性能に見合ったABS付きの4輪ベンチレーテッド・ディスク式が装備され、ホイール&タイヤはフロントが9J×17+255/45ZR17・リアが14J×18+345/35ZR18という前後で極端に異なるサイズが装着されました。又、ステアリング形式はパワーアシスト付きのラック&ピニオン式が採用されました。
この市販バージョンのデリバリーが開始されたのは、翌1992年に入ってからでした。当初350台が生産される予定であったものの、折からの世界的不景気の煽りを受け、翌1993年までに実際に生産されたのは280台程に留まりました。