ランチアは、1992年1月に開催されたブリュッセル・モーターショーにおいて、新型スポーツカー「ランチア ハイエナ ザガート」を発表、翌1993年から販売を開始しました。1988年から生産されていた高性能ホットハッチ「デルタHFインテグラーレ」をベースに、2ドア・2シーター仕様のボディを架装したモデルでした。
流麗かつ個性的なスタイリング
ボディのデザイン及び製造を担当したのは、かつて数々のランチア製スペシャリティ・クーペの開発を担当してきたイタリアのカロッツェリア・ザガートでした。但し、デザインの原案はザガートの完全なるオリジナルではなく、オランダの実業家ポール・コートと芸術家ナーニ・テデスキによるスケッチを元に、同社がリデザインしたものでした。
スタイリングは、角張った造形のハッチバック版HFインテグラーレとは対照的な、丸みを帯びた流麗なフォルムが特徴でした。又、絞り込まれたフロントノーズやボンネットフード上の切り込みに設けられたエアスクープ、ボディ側面のキャラクターラインなど、非常に個性的なディテールを備えていました。
しかし、「ランチア・グリル」と称される独自のフロントグリルにより、一目でランチア車である事が分かる記号性も備わっていました。ボディサイズは全長3,986mm×全幅1,740mm×全高1,240mmで、同年登場したハッチバック版「HFインテグラーレ・エボルツィオーネⅡ」と比較すると全長が86mm長く、全幅は30mm狭く、全高は125mm低いディメンションでした。
ハッチバック版よりも軽量かつパワフル
車両重量は、総アルミ製ボディやカーボンファイバー製インテリアの採用により、ハッチバック版よりも100kg程軽い1,248kgに抑えられてました。サスペンション形式はベースモデルと共通の4輪ストラット式で、ブレーキも同様に4輪ディスク式が踏襲されました。駆動方式も、ビスカスカップリング式のフルタイム4WD方式がそのまま受け継がれました。
搭載されるパワートレインは、ハッチバック版と同様の2L直4DOHCターボエンジン+5速MTながら、点火タイミングやフューエルインジェクションの設定変更、ターボチャージャーのブーストアップなどが行われていました。エンジンの最高出力/最大トルクは、ハッチバック版の215ps/5,750rpm・32kgm/2,500rpmに対し、250ps/6,000rpm・40kgm/3,800rpmへと大幅な向上を果たしていました。
一方インテリアは、運転席前と助手席前が凹型に窪んだ形状のインパネや、大径のスピードメーターとタコメーターの右側に縦3段にレイアウトされる7個の小径メーターなど、非常にユニークな造形が行われていました。販売台数は、当初ザガートの創立75周年を記念して75台が製造される予定であったものの、カーボンファイバー製インテリアの製造上の問題から、実際に生産されたのは24台に留まりました。
日本でも1,580万円という価格で販売され、3台が納入されました。