ルノーは1965年秋、大衆車「8(ユイット)」をベースとした上級車種「10(ディス)」を発売しました。プラットフォームやRRの駆動方式をはじめ、5ベアリング式のエンジンや4輪ディスクブレーキなどの基本メカニズムが8からキャリオーバーされました。一方で、ボディは8用をベース全長が延長されると共に、全幅も拡大されました。
前後のオーバーハングを延長
ボディタイプは8同様4ドアセダンで、スタイリングは直線基調のボクシーなフォルムを踏襲しつつ、フロントマスクやバンパー、リア廻りに専用の意匠が採用されました。又、前後のフェンダーにリップが備わる事も10の特徴でした。ボディサイズは全長4,200mm×全幅1,530mm×全高1,410mmで、8からそれぞれ250mm×80mm×5mm拡大されました。
一方でホイールベースは同一の2,270mmであった為、前後のオーバーハングが長い独特なプロポーションとなっていました。又、トレッドはフロントが1,260mm、リアが1,230mmで、8からそれぞれ10mmずつ拡大されました。車両重量は795kgで、8の標準グレードから70kg程増加していました。リアに搭載されるエンジンは、8の上級グレード「マジョール」と共通の1.1L直4OHVでした。
8:5:1の圧縮比やソレックス製のシングルキャブレターなど仕様も同一で、最高出力50hp/最大トルク8.6kgmのスペックにも変更はありませんでした。トランスミッションも同様に4速MTが標準となる他、フロントがダブルウィッシュボーン/コイル式、リアがセミトレーリングアーム/トーションバー式のサスペンション形式や、ラック&ピニオン式のステアリング形式も踏襲されました。又、145×380サイズのタイヤも共通でした。グレード体系は「マジョール」のみのモノグレード設定で、8とは異なり「ゴルディーニ」などの高性能版は最後まで用意されませんした。
1968年にフェイスリフトやエンジン置換を実施
1968年にフェイスリフトが実施され、ヘッドランプが丸型2灯式から角型2灯式に変更されると共に、ウィンカーランプの位置がヘッドランプの両サイドからヘッドランプ下に変更されました。
次いで1970年、エンジンが前年に実質的な後継モデルとして登場したFF車「12」と共通の1.3L直4OHV(最高出力52hp/最大トルク10kgm)に置換されました。4速MTとの組み合わせによる最高速度は、134km/hでした。しかし翌1971年には生産終了となり、6年間というルノー車としては短いキャリアに幕を下ろしました。
その翌年には弟分である8も全車生産終了となり、以後2014年に3代目「トゥインゴ」が登場するまでルノーのRR車はラインナップから消滅する事となりました。