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ホンダ 1300 (1969-1972):本田宗一郎こだわりの空冷エンジンを搭載したセダンとクーペ

ホンダ 1300 クーペ 1969-72

ホンダ 1300 クーペ 1969-72

1967年に発売された「N360」の大ヒットにより軽乗用車市場で確固たる地位を築いたホンダは、更に足場を固めるべく1969年4月に大衆車「ホンダ1300」を投入しました。世界的に前例のないユニークで高性能な空冷エンジンを採用した他、サスペンションにも特異な形式を採用した意欲作だったものの、乗用車としてはややバランスを欠き販売台数はあまり伸びませんでした。

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まずオーソドックスなセダンがデビュー

まず最初にデビューしたのは4ドアセダンで、スタイリングは個性的なメカニズムとは裏腹にごくオーソドックスなものでした。ボディサイズは全長3,885mm×全幅1,465mm×全高1,345mm、ホイールベースは2,250mmで、このクラスとして平均的なディメンションであった一方、車両重量は後述するエンジン構造の影響によりクラスの平均よりも100kg程重い885~910kgでした。

ホンダ 1300 77 1969-72

ホンダ 1300 77 1969-72

サスペンションは、フロントこそオーソドックスなストラット式であったものの、リアはクロスビーム・リーフ式独立懸架という極めてユニークな形式でした。そしてフロントブレーキには、廉価グレードはドラム式の採用が当たり前であった国産大衆車には珍しく、全車にディスク式が奢られました。駆動方式は、FRが主流であった国産普通乗用車の中では少数派のFFでした。

Honda Collection Hall 収蔵車両走行ビデオ Honda 1300(1969年)

 

クラスを超えた高性能エンジン

エンジンは1.3L SOHC4気筒でホンダが得意としていた空冷式を踏襲、かつ世界初となるDDACと呼ばれる一体構造二重空冷式を採用した事が大きな特徴でした。これは創業者であり当時の社長であった本田宗一郎のアイデアによるもので、水冷エンジン並みの冷却効率や静粛性の高さを備える他、ホンダならではの高出力が大きなセリングポイントでした。

ホンダ 1300 99S 1969-72 (出典:wikipedia.org)

ホンダ 1300 99S 1969-72 (出典:wikipedia.org)

グレード体系は「77」シリーズと「99」シリーズの2系統で、前者に最高出力100ps/最大トルク10.95kgmのシングルキャブエンジン、後者には最高出力115ps/最大トルク12.05kgmの4連キャブエンジンが搭載されました。最高出力に関しては、シングルキャブ仕様でさえも他社の同クラスを10~20馬力以上凌ぎ、1.6L~2Lクラスに匹敵する数値を誇りました。

ホンダ1300のCM

しかし、実用車としてはピーキーで扱いにくい性格であった上、構造が複雑で重量が嵩む為前輪荷重が過大で、足回りの弱さと相まって操縦安定性に難がありました。その為同年12月に仕様が変更され、エンジンがシングルキャブ仕様で95ps/10.5kgm、4連キャブ仕様で110ps/11.5kgmにデチューンされ扱い易さを向上させると共に、足回りが固められハンドリングの改善が図られました。

流麗なボディのクーペを追加

ホンダ 1300 クーペ 1969-72

ホンダ 1300 クーペ 1969-72

次いで1970年2月に、2ドアクーペの「ホンダ1300クーペ」が追加されました。ボディはセダンとは全くの別設計で、左右に分割されたフロントグリルや4灯式ヘッドランプを採用すると共に、ボクシーなセダンと異なり空力特性に配慮した流麗なプロポーションを備えていました。又、インテリアもセダンとは異なり、「フライトコクピット」と呼ばれるインパネが採用されました。

ホンダ 1300 クーペ 1969-72

ホンダ 1300 クーペ 1969-72

ボディサイズは全長4,140mm×全幅1,495mm×全高1,320mmで全高を除きセダンより拡大され、ホイールベースは同一、車両重量は10kg程増加した895~920kgでした。グレード体系は、シングルキャブエンジン搭載の「クーペ7」と、4連キャブエンジン搭載の「クーペ9」の2系統が設定されました。次いで翌3月に、「77」「クーペ7」に3速トルコン式AT「ホンダマチック」搭載車が追加されました。

ホンダ 1300 クーペ 1969-72

ホンダ 1300 クーペ 1969-72

エンジンがATの特性に合わせ最高出力80ps/最大トルク10.2kgmにデチューンされた他、メーターパネルとステアリングに異なるデザインが採用されました。そして同年11月にセダンのみマイナーチェンジを実施し、内外装のデザインが変更されると共に全長が110mm延長されました。同時に4連キャブレター仕様の「99」シリーズが廃止され、車名が「ホンダ77」に変更されました。

ホンダ 1300 クーペ7S 1969-72 (出典:wikipedia.org)

ホンダ 1300 クーペ7S 1969-72 (出典:wikipedia.org)

次いで1971年6月にクーペもマイナーチェンジを実施し、フェイスリフトを行うと同時に車名が「ホンダクーペ」に変更されました。又、グレード体系も変更され、セダンと同一のフロントマスクを持つ「ゴールデンシリーズ」と、従来通りの丸型4灯式ヘッドランプと左右分割式フロントグリルを採用する「ダイナミックシリーズ」の2系統となりました。

ホンダ 1300 クーペ ゴールデンシリーズ 1971-72

ホンダ 1300 クーペ ゴールデンシリーズ 1971-72

そして、排出ガス規制強化に対し空冷エンジンでの対応が不可能になった為、1972年9月に生産終了となり、同年11月にデビューした水冷エンジン搭載の後継モデル「ホンダ145」シリーズにバトンタッチされました。

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