ホンダの小型乗用車「145」は、1969年に発売された「1300」の後継モデルとして1972年10月に販売が開始されました。1300からボディシェルやプラットフォームなどの根幹部分をほぼそのまま踏襲しながらも、エンジンを水冷化した事により騒音や重量の過大、ヒーターの能力不足など1300が抱えていた様々な問題点を解消し、より普遍的で完成度の高い実用車へと変貌しました。
エンジン変更で軽量化
ボディのバリエーションは、1300と同様ボクシーな4ドアセダンと流麗なフォルムの2ドアクーペが用意され、クーペがヘッドランプを丸型4灯式から角型2灯式に変更した事を除き、ほぼ同一のスタイリングを踏襲しました。ボディサイズは、セダンが全長3,995mm~4,020mm×全幅1,465mm×全高1,360mm、クーペが全長4,140mm×全幅1,495mm×全高1,330mmで、全高が僅かに高くなった事を除き1300とほぼ同一でした。
又、ホイールベースも2,250mmで変更はなく、前:ストラット式/後:クロスビーム・リーフ式独立懸架のユニークなサスペンション形式も踏襲されました。車両重量は845kg~880kgで、エンジンの置換により1300から40~50kg軽量化されました。エンジンは、ホンダ独特のDDAC方式を採用した空冷式に替わり、シビック用1.2L直4SOHCユニットを1,433ccに拡大した水冷式に変更されました。
エンジンはパワーダウンするも扱い易さが向上
シングルキャブ仕様の他、クーペには従来の4キャブ仕様に替わるものとして機械式燃料噴射仕様が設定され、スペックはシングルキャブ仕様が最高出力80ps/5,500rpm、最大トルク12kgm/3,500rpm、燃料噴射仕様が最高出力90ps/6,000rpm、最大トルク12.5kgm/4,000rpmでした。共に最高出力が1300より大幅に低下した一方で、最大トルクが増加すると共に最高出力・最大トルクの発生回転数が下げられ、扱い易さが大幅に向上しました。
トランスミッションは、当初用意されたのは4速MTのみでホンダマチック(AT)はカタログ落ちしました。又、エンジンの軽量化に伴い前輪荷重が減少し、FF特有の癖が強かった操縦安定性が改善されました。グレード体系は、セダンが下から「スタンダード」「デラックス」「カスタム」、クーペが「SL」「GT」「GL」「F1」で、全車に前輪ディスクブレーキが、「スタンダード」以外に温水式ヒーターが装備されました。
翌1973年5月、ホンダマチック車が追加され、同年11月には保安基準に適合させる為の一部改良と共に、セダンが廃止されクーペに一本化されました。そして1974年10月、シビックに生産を集中化する方針の元、登場から僅か2年で生産終了となりました。145は、発売当初から既に基本設計がやや古くなっており新鮮味に欠けた為、人気は低迷し市場で存在感を示す事は出来ませんでした。