日産のライトバン「エスカルゴ」は、「Be-1」「パオ」に続く同社のパイクカーシリーズ第3弾として、1989年1月に「パオ」と同時に発売されました(発表はパオの方が先)。「パルサーバン」(VN10型)のプラットフォームを流用し、車名の「エスカルゴ=かたつむり」を彷彿とさせるユニークなエクステリアデザインのボディを架装したモデルで、目立つ外観からコマーシャルカーとして大きな効果を発揮しました。
個性溢れるスタイリング
スタイリングは、丸みを帯びたグリルレスのフロントノーズと目玉のように飛び出たヘッドランプ、広大なフロントウィンドウやフロントフェンダーからルーフにかけて連なるようにデザインされたアーチ状のAピラー、それに続くハイトが高くボディ後部に向けなだらかに下がっていくカーゴルームなど、他のどの商用車にも似ていない個性に溢れたものでした。
ボディバリエーションは、これもユニークな楕円形のリアクォーターウィンドウが備わる仕様と、リアクォーターウィンドウ無しのパネルバン仕様が用意された他、それぞれメタルトップ仕様と開閉式のキャバストップ仕様が選択出来ました。ボディのスペックは全長3,480mm×全幅1,595mm×全高1,835~1,860mm、ホイールベースは2,360mm、車両重量は950~970kgでした。
全長はBe-1やパオよりも短い一方で全高は遥かに高く、前述の様々なデザイン処理と相まってユーモラスな雰囲気を醸していました。乗車定員は4人で、最大積載量は300kgでした。サスペンション形式は、パルサーバンと同様のフロント:ストラット式/リア:トレーリングアーム式による4輪独立懸架で、FFの駆動方式と相まって低床かつフラットなカーゴスペースを実現していました。
インテリアもユニーク
搭載されたエンジンは、パルサーやサニーなど様々な車種に採用実績のあった1.5L直4SOHC 電子制御キャブレター仕様のE15S型(最高出力73ps/5,600rpm・最大トルク11.8kgm/3,200rpm)で、トランスミッションは3速トルコン式ATが組み合わせられました。又、インテリアもエクステリアに劣らず非常にユニークなデザインが取り入れられていました。
デスク状のフラットなインパネのセンター部分に扇型のコンビネーションメーターが備わり、その下にはインパネシフト式のシフトレバーが装備されていました。又、ステアリングホイールは往年のシトロエン車を彷彿とさせる一本スポーク式でした。販売方式は、同時発売されたパオと同様受注生産であったものの、受注期間は遥かに長く1990年12月までの2年間に渡り行われました。総生産台数は1万600台でした。