シトロエン「BX」は、「CX」と「GS」の間を埋めるモデルとして開発され、1982年9月に発表されました。メカニズム面ではシトロエン独自の「ハイドロ・ニューマチック・サスペンション」を踏襲する一方、ボディのデザインをカロッツェリア・ベルトーネに委託した事で、従来のモデルから大幅なイメージチェンジに成功しました。
直線基調のデザインを採用
ボディバリエーションはまず5ドアハッチバックが登場し、遅れて1985年に5ドアステーションワゴンの「ブレーク」が追加されました。デザインは従来モデルでは社内スタッフにより行わていたものの、このBXは外部デザインスタジオに委託された初めてのモデルとなりました。デザイナーはマルチェロ・ガンディーニで、直線基調のシャープな造形は曲線基調の従来のシトロエン車とは好対照でした。
ハッチバック初期型のボディサイズは全長4,230mm×全幅1,660mm×全高1,365mmで、GSよりも僅かに大きく、ホイールベースも100mm程延長され2,655mmとなりました。一方車両重量は、FRP素材の多用や部品点数の軽減によりGSよりも軽い885~950kgとなりました。サスペンション形式は、フロントがGSのダブルウィッシュボーン式からストラット式に変更されました。
エンジンはプジョー製に
リアはGSと同じトレーリングアーム式で、ブレーキも同様に油圧式の4輪ディスクブレーキが採用されました。ステアリングはノンパワーが基本であったものの、パワーステアリングも用意されました。駆動方式はFFを踏襲し、エンジンはGSの自社製空冷フラット4SOHCに対し、すでにプジョー傘下に入っていた事もありプジョー製の水冷直4SOHCが搭載されました。
発売当初ラインナップされたユニットは、最高出力63hp/72hpの2種類の1.4Lと最高出力90hpの1.6Lで、トランスミッションはまず4速と5速のMTが用意され、1984年に4速トルコン式ATが追加されました。一方インテリアは、ボビン式のスピードメーターやバーグラフ式のタコメーターが備わるなど、シトロエンらしいアヴァンギャルドさは健在でした。
ターボ車や4WD車を追加
そして1983年に1.9Lディーゼルエンジン(最高出力65hp)が、次いで1985年に1.9Lガソリンエンジン(最高出力105hp)が追加されました。次いで1986年にマイナーチェンジが行われ、インパネのデザインが一新されメーター類がオーソドックスな丸形アナログ式に改められました。同時に、1.9Lガソリン燃料噴射仕様エンジン(最高出力125hp)と1.8Lディーゼルエンジンが追加されました。
更に1987年に1.9LガソリンDOHCエンジン(最高出力160hp)が、1988年に1.9Lディーゼルターボエンジン(最高出力90hp)が、1989年にフルタイム4WDモデルが相次いで追加されました。そして1993年、後継モデルの「エグザンティア」にバトンを渡し生産終了となりました。BXは従来のシトロエン車と異なる普遍的なデザインと各段に向上した信頼性により、欧州でベストセラーカーとなりました。
日本には1984年から輸入が開始され、1.6Lの「TRS」、1.9Lキャブレター仕様の「1.9TRS」、同燃料噴射仕様の「1.9TZi」や「GTi」、同DOHCの「16バルブ」といったグレードが導入され、高い人気を獲得しました。