フェラーリは2002年のジュネーブ・ショーで、「550マラネロ」の後継モデルとなるFRスーパースポーツ「575Mマラネロ」を発表しました。プラットフォームやボディなど基本コンポーネンツは550マラネロから受け継がれたものの、エンジンの排気量が拡大されパフォーマンス向上を果たした他、V12エンジン搭載車として初めてセミAT「F1マチック」が設定されました。
ボディはクーペのみを設定
ボディタイプは2ドア・2シーターのフィクスドヘッド・クーペのみの設定で、550に限定生産モデルとして追加されたオープン・ボディのスパイダーが用意される事は最後までありませんでした。デザインは引き続きピニンファリーナの手により行われ、基本的なスタイリングを550マラネロから踏襲しながらも、フロント廻りとホイールの意匠変更によりイメージの刷新が図られました。
Cd値は同一の0.33で、全長4,550mm×全幅1,935mm×全高1,277mmのボディサイズや2,500mmのホイールベースにも変更はありませんでした。一方、車両重量は40kg増加し1,730kgとなっていました。フロントに搭載されるエンジンは、550マラネロ/スパイダーの5.5L 65度V12DOHCをベースに排気量が5.7Lに拡大されると共に、圧縮比がそれまでの10.6:1から11.0:1まで高められました。
550から動力性能が向上
その結果、アウトプットは550マラネロ/スパイダーを最高出力で23HP、最大トルクで2.2kgm上回る508HP/7,250rpm・60.1kgm/5,250rpmに向上しました。トランスミッションは6速MTの他、前述のとおり6速セミATが用意され、AT車は「575MマラネロF1」と呼ばれました。ギアレシオは、ファイナルを含め550マラネロ/スパイダーと同一でした。又、同社のロードカーとして初のローンチ・コントロールが用意された事もトピックでした。
パフォーマンスは、最高速度が550マラネロより5km/h高い325km/h、0-60mph加速は0.4s短縮された4.2sとなりました。その他、電子制御可変ダンパー採用の4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションやラック&ピニオン式のステアリング形式、18インチのホイール&タイヤサイズなど基本的なコンポーネンツは550マラネロ/スパイダーから踏襲されました。
コンペティションモデルの追加
一方インテリアは、メーター廻りのデザインが550マラネロ/スパイダーから大きく変更されると共に、マルチインフォメーションディスプレイが追加されました。又、装備面では新たに電動式シートポジションメモリーが採用されました。そして2003年に、575Mマラネロをベースにコンペティション仕様とした「575GTC」が追加されました。
エアロダイナミックなカーボン・コンポジット製ボディを架装し、車両重量が1,200kgまで軽量化されると共に、エンジンは排気量が6Lに拡大されアウトプットが最高出力605HP/6,300rpm・最大トルク74.4kgm/5,200rpmまで高められました。575Mマラネロは2005年に生産を終了し、翌2006年に後継モデル「599GTBフィオラノ」にバトンタッチされました。