フェラーリは2006年のジュネーブ・ショーで、「575Mマラネロ」の後継モデルとなる2シーターFRグランツーリスモ「599GTBフィオラノ」を発表しました。プラットフォームが一新され、2+2GT「612スカリエッティ」同様のアルミ製スペースフレーム構造が採用された他、パワートレインの刷新や電子デバイスの採用と相まって、パフォーマンスが一段と向上しました。
ボディタイプは575Mマラネロ同様、フィクスドヘッド・クーペのみの設定で、デザインは引き続きピニンファリーナの手により行われました。スタイリングは612スカリエッティに類似した雰囲気を持つものの、よりシャープな造形が施されていました。又、Cピラーにヒドゥンピラーを採用した事や、テールランプがそれまでの丸型4灯式から丸型2灯式に変更された事も特徴でした。
エンツォフェラーリ譲りのエンジンを搭載
ボディサイズは全長4,666mm×全幅1,960mm×全高1,336mmで575Mマラネロより一回り大きく、ホイールベースは250mm長い2,750mmでした。車両重量は1,750kgで、575Mマラネロから20kgの増加に留められていました。フロントに搭載されるエンジンは、「エンツォフェラーリ」の6L 65度V12DOHCをデチューンした物で、最高出力611.5HP/7,600rpm・最大トルク62kgm/5,600rpmのアウトプットを発生しました。
このスペックは、575Mマラネロを103.5HP/1.9kgm上回るものでした。トランスミッションは6速MTの他、従来の「F1マチック」より変速スピードが早められた6速セミAT「F1 SuperFast」が用意されました。パフォーマンスは、最高速度が575Mマラネロより8km/h高い333km/h、0-100km/h加速は0.6s以上短縮された3.6sとなりました。
サスペンション形式は4輪ダブルウィッシュボーン式を踏襲する他、電子制御マグネティックダンパー「SCM」が採用されました。又、新たに「F1トラック」と呼ばれるトラクションコントロールシステムや、「MANETTINO(マネッティーノ)」と呼ばれる5つの走行モードが選択出来るドライブモード・セレクターが装備された事もトピックでした。
更に高性能なバージョンを追加
そして2010年の北京モーターショーで、更なる高性能を追求した599台限定生産モデル「599GTO」が発表されました。ボディ素材の変更により車両重量が1,605kgまで軽量化されると共に、エアロパーツの装着により空力特性の改善が図られました。同時にパワートレインにも手が加えられ、6L V12エンジンのアウトプットは最高出力661HP/8,250rpm・最大トルク63.2kgm/6,500rpmまで高められました。
更に6速セミATにも改良が施され、変速スピードがそれまでの0.1sから0.06sに短縮されました。これらのリファインに伴い、パフォーマンスは最高速度が335km/h以上、0-100km/h加速が3.35sへと向上し、市販車トップレベルに到達しました。その他、足回りやブレーキの強化も図られ、総合的な走行性能が大幅に向上しました。
そして2012年に後継モデル「F12ベルリネッタ」が発売された事に伴い、599GTBフィオラノは生産終了となりました。