三菱自動車は1982年2月に、「ミラージュ/ランサー・フィオーレ」と「ギャランΣ/エテルナΣ」の間に位置する新型小型4ドアセダン「トレディア」を発売しました。前述のミラージュ/ランサー・フィオーレをベースとし、同クラスの「ランサーEX」に代わるモデルとして開発されました。又、同時に発売された3ドアクーペ「コルディア」とは姉妹車種の関係にありました。
ボクシーなボディは空力特性にも配慮
スタイリングは、ランサーEXの流れを汲む直線基調のボクシーなフォルムを採用しながら、ボディの前後を絞り込んだタンブルフォームやテールエンドをヒップアップさせたダックテール、「コンシールドホイールカット」と称するタイヤに被ったリアホイールオープニングなど空力特性向上に配慮が行われ、Cd値0.39を実現していました。
ボディサイズは全長4,280mm×全幅1,660mm×全高1,370mmで、ランサーEXに対し全長と全高が若干縮小され、全幅は拡大されていました。ホイールベースはミラージュ/ランサー・フィオーレから延長され、ランサーEXとほぼ同等の2,445mmでした。サスペンション形式は、フロント:マクファーソンストラット式/リア:トレーリングアーム式による4輪独立懸架でした。
三菱 トレディアのCM
4種類のエンジンでスタート
駆動方式は当初FFのみの設定で、エンジンは1.4L直4SOHC NAのG12B型(最高出力79ps/最大トルク11kgm)、1.6L直4DOHC NA(最高出力92ps/最大トルク12.5kgm)及びターボ(最高出力115ps/最大トルク17kgm)の2種類のG32B型、そして1.8L直4DOHC NAのG62B型(最高出力100ps/最大トルク15kgm)の全4種類のラインナップでスタートしました。
トランスミッションは、1.6Lターボ車には副変速機付きの4速MTが、それ以外には一般的な4速MT又は世界初となる電子制御式の3速トルコン式ATが組み合わせられました。インテリア面では、最上級グレードに世界初の液晶式デジタルメーターが装備されたコルディアのような際立った特徴はなかったものの、広い室内スペースとトランクルームが売り物でした。
そして翌1983年5月にターボ車のパワートレインを一新、エンジンが1.8L直4ECI仕様のG62B型(最高出力135ps/最大トルク20kgm)に置換されると共に、トランスミッションが副変速機を持たないオーソドックスな5速MTに変更されました。同時に、エクステリア面ではボンネットフード上のエアインテークが廃止されました。
次いで同年10月にフェイスリフトを実施すると共に、ターボ車をパートタイム4WD方式に変更、同時に1.4L車がカタログ落ちしました。続いて1985年10月には、1.8L NA車にもパートタイム4WD仕様が追加されました。そして1988年に後継モデルの発売もなく生産終了となり、トレディアの車名は一代限りで消滅しました。
トレディアは車としての完成度は高かったものの、地味な存在であった為商業的には失敗し、三菱自動車はランサーEXの生産を継続せざるを得ない状況に陥りました。6年間での総生産台数は約4万2千台で、デビューが3年古いランサーEXにも及ばない数字でした。