1974年にポルシェ初のターボエンジン搭載モデルとしてデビューしたスポーツカー「911ターボ」は、2006年に4度目の世代交代が行われ、997型となりました。先代996型から基本コンポーネンツが一新されるとともに、ボディ剛性の強化が図られました。また、エクステリア・デザインもイメージチェンジが図られました。
フルタイム4WDシステムを変更
ボディタイプは当初フィクスドヘッドの2ドアクーペのみの設定で、エクステリア面ではヘッドランプがティアドロップ型からオーソドックスな丸型に変更されたほか、リアにリトラクタブル式スポイラーが装備されました。また、Cd値は996型と同一の0.31でした。ボディサイズは全長4,435mm×全幅1,852mm×全高1,300mmで、996型から全幅が22mm、全高が5mm拡大されました。
ホイールベースは2,350mmで、変更はありませんでした。駆動方式はフルタイム4WDが踏襲されたものの、メカニズムがそれまでのビスカスカップリング式から電子制御多板クラッチ式に刷新されました。従来同様リアに搭載されるエンジンは、水冷3.6L水平対向6気筒DOHCターボがキャリオーバーされました。
DME電子燃料噴射装置と可変ジオメトリー機構付きターボチャージャーを採用し、最高出力480ps/6,000rpm・最大トルク63.2kgm/2,100-4,000rpmのアウトプットを発生、996型からは60ps/6.1kgmもの向上を果たしました。トランスミッションはそれまでと同様、6速MTと5速トルコン式AT「ティプトロニック」が設定されました。
電子制御ダンパーを設定
パフォーマンスは、最高速度が従来比で6km/hアップの310km/hとなり、0-100km/h加速タイムは0.5s短い3.7sとなりました。サスペンションは、フロント:マクファーソンストラット式/リア:マルチリンク式の形式が踏襲された一方で、新たに電子制御ダンパー「PASM」が設定されました。
ステアリング形式は従来同様のパワーアシスト付ラック&ピニオン式で、4輪ベンチレーテッド・ディスク式を踏襲するブレーキは、ローターが前後とも20mmずつ拡大され350mm径となりました。ホイール&タイヤはフロントが8.5J×19インチホイール+235/35ZR19タイヤ、リアが12J×19インチホイール+305/30ZR19タイヤの組み合わせで、それまでよりも大径かつワイドなものとなりました。
M/Cで排気量を拡大
その後、2007年に電動ソフトトップが備わるカブリオレが追加されました。次いで2009年にマイナーチェンジが実施され、フロントまわりやリアまわりの意匠が変更されるとともに、LEDヘッドランプ/テールランプが採用されました。同時に排気量が3.8Lに拡大され、アウトプットが最高出力500ps/6,000rpm・最大トルク66.3kgm/1,950-5,000rpmに向上しました。
また、5速ティプトロニックに代わり、デュアルクラッチ式の7速PDKが設定されたことも変更点のひとつでした。クーぺ・PDK仕様のパフォーマンスは、最高速度312km/h・0-100km/h加速3.6sでした。追って2010年には、3.8Lエンジンのアウトプットを最高出力530ps/6,250-6,750rpm・最大トルク71.4kgm/2,100-4,250rpmまで高めて搭載する「ターボS」が追加されました。
そして2013年に、後継モデルの991型911ターボにバトンタッチされました。997型911ターボの日本への初上陸は2006年3月で、翌2007年6月にカブリオレが追加されました。次いで2009年8月にマイナーチェンジ版への切り替えが行われ、2010年3月にターボSが追加されました。