トヨタのプレミアムサルーン「セルシオ」の初代モデルは、北米市場をメインターゲットに開発された「レクサスLS」の国内向けバージョンとして1989年10月にデビューしました。国内市場専用高級車「クラウン」とショーファードリブン「センチュリー」の中間に位置するモデルながら、その走行フィールはヒエラルキーを超越した上質感溢れるものでした。
ボディサイズはクラウンとセンチュリーの中間
ボディタイプは、4ドアハードトップやステーションワゴンなどもランナップされていた当時のクラウンとは異なり、4ドアセダンのみの設定でした。スタイリングは基本的にコンサバティブなものながら、Cd値0.29の空力的に洗練されたプロポーションを備えていました。又、ボディカラーに「トーニング」と呼ばれるツートンカラーが設定された事も特徴でした。
ボディサイズは全長4,995mm×全幅1,820~1,830mm×全高1,400~1,410mm、ホイールベースは2,815mmで、クラウンとセンチュリーの中間程度のディメンションでした。車両重量は、クラウン3ナンバー車よりもやや重い1,690~1,790kg(初期型)でした。サスペンションは全車4輪ダブルウィッシュボーン式を採用しながら、「A仕様」「B仕様」「C仕様」で異なるスプリングが与えられました。
3種類のサスペンションを設定
「A仕様」にはコイルスプリングが、「B仕様」には路面状況に応じ減衰力が自動的に切り替わる「ピエゾTEMS」と呼ばれる電子制御スプリングが、「C仕様」には電子制御エアスプリングが採用されました。駆動方式はコンベンショナルなFRで、エンジンは一足早くクラウンにも採用されたオールアルミ製4L V8DOHCの1UZ-FE型(最高出力260ps/最大トルク36kgm)が搭載されました。
トランスミッションは、4速トルコン式ATが組み合わせられました。グレード体系は前述の3つの仕様に加え、C仕様に後席用パワーシートやデュアルエアコンを追加装備し、ショーファードリブン用途を見込んだ「Fパッケージ装着車」が設定されました。インテリアは保守的なクラウンとは異なり、オプティトロン(自発光式)メーターを採用した先進的なものでした。
そして1992年8月にマイナーチェンジを実施し、エクステリア面ではフロントグリルの意匠変更や、アルミホイールのインチアップ(15インチから16インチに)と意匠変更が行われました。又、インテリア面では木目パネルの採用部位拡大やステアリングホイールのデザイン変更、シートの表皮変更などが行われた他、ナカミチ製カーオーディオが採用されました。これらの変更に伴い、車両重量は40kg増加しました。
そして1994年10月にレクサスLS共々フルモデルチェンジを実施し、2代目モデルに移行しました。初代セルシオは高額な車種であったにも関わらず、バブル景気に乗り販売は好調で、法人用途から若年ユーザー層まで幅広い層から支持されました。