フォルクスワーゲンは2002年3月のジュネーブ・ショーにおいて、アッパーミディアムモデル「パサート」の上位に位置する同社初のフラッグシップ4ドアセダン「フェートン」を発表、同年5月から欧州での販売を開始しました。「メルセデス・ベンツ・Sクラス」や「BMW・7シリーズ」と競合するFセグメントモデルで、W12気筒エンジン搭載車も設定されました。
エアサスペンションを装備
5代目パサート・セダンを一回り大きくしたようなフォルムを持つボディは、空力特性向上にも注力されCd値0.31を実現していました。ボディサイズは全長5,055mm×全幅1,903mm×全高1,450mmで、全高を除きパサートより一回り以上大きい堂々たる体躯でした。又、ホイールベースはパサートより180mm程長い2,881mmに設定されていました。
サスペンションは、形式こそパサート同様のフロント:4リンク式/リア:ダブルウィッシュボーン式ながら、フラッグシップモデルに相応しくエアサスペンションが装備されました。エンジンは当初、3.2L V6ガソリンNA(最高出力241ps/最大トルク32.1kgm)、6L W12ガソリンNA(最高出力450ps/最大トルク57kgm)、5L V10ディーゼルターボ(最高出力313ps/最大トルク76.4kgm)の3種類が用意されました。
駆動方式はV6エンジン車のみFFで、それ以外にはフルタイム4WDが採用されました。トラスミッションは、V6エンジン車には5速トルコン式AT又は6速MTが、W12エンジン車にはマニュアルモード付5速トルコン式ATが、V10ディーゼルエンジン車にはマニュアルモード付6速トルコン式ATが組み合わせられました。
様々な安全装備を採用
一方インテリアは、ウッドを多用したインパネやセンターコンソールが備わる他、「4ゾーン・クリマトロニック」と呼ばれるフルオートエアコンが装備されました。又、安全装備面ではEBD&ブレーキアシスト付ABS、ESP(横滑り防止装置)、トラクションコントロール、EDS(エレクトリック・デファレンシャルロック・システム)、EBC(エンジン:ブレーキ・コントロール)などが採用されました。
その後、新たなエンジン・ラインナップとして4.2L V8ガソリンNA(最高出力335ps/最大トルク43.8kgm)と3L V6ディーゼルターボ(最高出力240ps/最大トルク50.9kgm)が追加された他、2005年にはボディバリエーションの拡充も図られ、全長とホイールベースを120mm延長したロングホイールベース仕様が追加されました。
そして2007年にフェイスリフトが実施されると共に、3.2 V6エンジンが3.6L V6直噴エンジン(最高出力280ps/最大トルク37.7kgm)に置換されました。同時に、5L V10エンジン車はユーロの新排出ガス規制への適合困難を理由にカタログ落ちしました。次いで2010年5月にビッグマイナーチェンジが実施され、フロントマスクの意匠が一新されました。
フェートンは同社の大きな期待を背負って登場したものの、販売面では欧州をはじめ主要なマーケットとして想定していた北米市場でも振るわず、米国では2006年に販売が打ち切られました。日本市場には当初2003年秋に導入が予定されていたものの、結局実現には至りませんでした。
北米での販売終了後もフェイスリフトなどを実施しながらごく僅かの台数を生産しドイツ国内で続けていましたが、2016年3月18日に専用工場での生産を終了、フェートンは14年の歴史に幕を閉じました。