第二次大戦後国営化され、「ルノー公団」となって再スタートを切ったルノーは、1946年に戦後初のニューモデルとして大衆車「4CV」を発売しました。戦前にリリースされた「シュヴァキャトル」に代わるモデルで、その設計は「フォルクスワーゲン・タイプⅠ(ビートル)」の影響を色濃く受けたものとなっていました。商業的に大成功を収め、フランスの国民車的な存在となりました。
軽量設計により十分な性能を確保
ボディタイプは2ドアセダンであったビートルに対し、実用性重視の思想により4枚のドアが与えられていました。スタイリングは、丸みを帯びたフォルムや張り出した前後のフェンダーなどにビートルの影響が感じられるものの、サイドステップが廃された他リアウィンドウに一枚ガラスを採用するなど、より近代的なディテールを備えていました。
ボディサイズは全長3,600mm×全幅1,430mm×全高1,480mmで、低められた全高を除きシュヴァキャトルにほぼ等しく、ビートルよりは一回り以上コンパクトでした。ホイールベースはシュヴァキャトルより200mm以上短い2,100mmで、車両重量は200kg軽い560kgに抑えられていました。駆動方式はFRであったシュヴァキャトルとは異なり、ビートル同様のRRが採用されました。
但し、リアに搭載されるエンジンはビートルが空冷水平対向4気筒であったのに対し、水冷直列4気筒OHVが採用されました。排気量は1.1Lのビートルより遥かに小さい760ccで、17hpという最高出力も大きく劣っていたものの、軽量設計の恩恵で3速MTを介しての最高速度はビートルに遜色ない100km/hに達しました。
ルノー 4CVの登場した映画のワンシーン
4輪独立懸架を採用
サスペンション形式は、フロントはシュヴァキャトルと同一のダブルウィッシュボーン式ながら、スプリングがリーフからコイルに変更され、リアはリジッド・リーフ式からスイングアクスル/コイル式による独立懸架にリファインされました。又、ステアリング形式はラック&ピニオン式で、ブレーキは4輪とも油圧ドラム式が採用されました。
一方、4人乗りの室内はシュヴァキャトルから居住性が大幅に改善されていました。そして翌1947年、リアシートを廃した商用モデル「コメルシアル」が追加され、1950年にはキャンバスルーフが備わる「デカポタブル」と、エンジンの最高出力を21hpに高めて搭載する豪華グレード「グラン・ルクス」が追加されました。
更に翌1951年、モータースポーツの区分けに考慮しボアが僅かに縮小され、排気量が747ccとなりました。更にこの年、圧縮比アップなどにより最高出力を38hpまで高めて搭載し、最高速度130km/hの性能を持つ「R1063」がリリースされました。次いで1954年、フェイスリフトと同時に「フェルレック」と呼ばれる電磁クラッチ仕様がオプション設定されました。
そして1956年によりモダンなボディを持つ上級モデル「ドーフィン」がリリースされたものの、4CVはラインナップを縮小した上で後継モデル「3」及び「4」が登場する1961年まで生産が続けられました。又、1953年から日野自動車によるラインセンス生産が開始された為、日本でも馴染みの深いモデルとなりました。