1913年に小さなエンジンメーカーとしてスタートしたBMWは、1924年に同社初の4輪自動車のプロトタイプを完成させました。このモデルは結局市販化には至らなかったものの、その4年後の1928年10月に小型乗用車「オースチン・セブン」を「ディクシー・3/15HPタイプDA-1」の車名でライセンス生産を行っていたディクシー社を傘下に収め、同車を「BMWディクシー・3/15タイプDA-1」として発売しました。
3タイプのボディを用意
ボディタイプは、フィクスドヘッドボディの2ドアセダンと商用バン、そしてオープンボディの2ドア・2シーター仕様コンバーチブルの3タイプがラインナップされました。スタイリングは、スクエアなボディ形状をはじめ、独立したヘッドランプやサイクルフェンダーが備わるなど、当時の乗用車として標準的なものでした。
ボディ・ディメンションは全長3,000mm×全幅1,275mm×全高1,625mm、ホイールベース1,905mmで、360cc時代の軽ワンボックス車程度の大きさでした。また、トレッドはフロントが1,000mm、リアが1,030mmで、車両重量は485kgでした。駆動方式はFRで、フロントに搭載されるエンジンは排気量748.5ccの水冷直4SV(サイドバルブ)ソレックス・シングルキャブレター仕様でした。
最高出力は15hp/3,000rpmで、3速MTとの組み合わせにより最高速度75km/hの性能を発揮しました。サスペンション形式は、同社オリジナル設計によるプロトタイプが先進的な4輪独立懸架を採用していたのに対し、当時として一般的なリーフ・スプリング採用の4輪リジッド・アクスル式となっていました。
改良型やスポーツモデルが登場
ステアリング形式はウォーム&ローラー式で、ブレーキは4輪ドラム式が採用されました。また、タイヤは4.00×17インチが装着されていました。そして翌1929年に、ファイナルレシオのローギアード化やタイヤの大径化、ブレーキ操作系の変更などを図った改良型の「3/15DA-2」に切り替えられました。
追って1930年には、低重心化を図った専用設計の2シーター仕様オープンボディに、最高出力を18hp/3,500rpmに高めた748.5ccエンジンを搭載するスポーツモデル「DA-3ヴァルトブルク」が追加されました。このモデルは翌1931年には早くも廃止されたものの、その一方で標準モデルの3/15DA-2は同じ年にマイナーチェンジを受け、3/15DA-4に移行しました。
3/15DA-4は、それまでのモデルからエクステリアが変更されるとともにフロントサスペンションが一新され、スイングアクスル式+横置きリーフ・スプリングによる独立懸架となっていました。そして翌1932年3月にフルモデルチェンジが実施され、BMW独自の設計が取り入れられた「3/20」にバトンタッチされました。