ロールス・ロイスは1959年、1956年に生産終了となった「ファントムⅣ」の後継モデルとなる新型ショーファードリブン、「ファントムⅤ」をリリースしました。従来から基本設計が一新され、弟分の「シルヴァークラウドⅡ」用をベースとしたシャシーやパワートレインなどが採用されました。
ボディサイズを拡大
フォントムⅣ同様、ロールス・ロイス社からはシャシーとメカニカル・コンポーネンツのみが供給され、ボディの架装はコーチビルダーの手にゆだねられました。コーチワークを担当したメーカーは、H.J.ミュリナーとジェームズ・ヤング、およびパークウォードでした。架装されたボディタイプは、フィクスドヘッドの4ドアリムジンが大半でした。
その一方で、少数ながらオープンボディの4ドアカブリオレ「ランドウレット」も製造されました。それらのボディのスタイリングはファントムⅣから近代化され、ほぼフラッシュサイド・フルワイズといえるフォルムとなっていました。ボディサイズは全長6,045mm×全幅2,007mm×全高1,753mmで、ファントムⅣから全長・全幅が拡大されました。
V8OHVエンジンを搭載
一方、3,658mmのホイールベースはシルヴァークラウドからは大幅に延長されていたものの、ファントムⅣよりは若干短くなっていました。また、車両重量は2トン半を超える2,591kgに達しました。駆動方式はコンベンショナルなFRが踏襲され、エンジンはそれまでの5,675cc直列8気筒oise方式(吸気側OHV・排気側SV)に代わり、6,227cc V型8気筒OHVが搭載されました。
圧縮比はシルヴァークラウド同様8:1で、装着されるキャブレターも同様にSUツイン・キャブレターでした、また、最高出力は引き続き同社のポリシーに従い公表されませんでした。組み合わせられるトランスミッションはシルヴァークラウド同様の4速ATながら、重くなった車両重量に対応するためファイナルレシオが大幅に下げられていました。
動力性能は最高速度163km/h、0-80km/h加速9.7s、0-400m加速19.4sでした。サスペンション形式は、シルヴァークラウドⅡと同様のフロント:ダブルウィッシュボーン/コイル独立懸架式・リア:リジッド・リーフ式が踏襲されました。また、ステアリングにはシルヴァークラウドⅡ同様にパワーアシストが採用されました。ブレーキは従来同様4輪ドラム式で、タイヤは8.20-15サイズが装着されました。
その後、1963年にエンジンに改良が施されるとともに、ヘッドランプがそれまでの2灯式から4灯式に変更されました。そして1968年、後継モデル「ファントムⅥ」の登場にともない、総生産台数516台をもって生産が打ち切られました。