1906年に正式に創立されたイギリスの高級車メーカー、ロールス・ロイスは、第一次世界大戦終結から3年後の1922年に戦後初の新型乗用車となる「トゥウェンティー(20)」をリリースしました。それまでの主力モデル「シルヴァーゴースト40/50HP」ではまかなえきれなくなった新たなユーザー層を獲得するために開発されたモデルで、一回りコンパクトなボディと小排気量のエンジンを備えていました。
近代的なOHVエンジンを搭載
ロールス・ロイス社から供給されるのはシャシーとメカニカル・コンポーネンツのみで、ボディの架装はコーチビルダーにゆだねられていました。ボディタイプはフィクスドヘッドの4ドアセダンやソフトトップが備わる4ドアコンバーチブルのほか、2ドアのドロップヘッドクーペも生産されました。ボディ・ディメンションは全長4,521mm、ホイールベース3,277mmで、シルヴァーゴーストよりも若干小振りでした。
駆動方式はコンベンショナルなFRが踏襲され、エンジンは総排気量がシルヴァーゴーストの半分以下となる3,127ccの水冷直列6気筒12バルブ(1気筒あたり2バルブ)のガソリンユニットが搭載されました。このユニットは、それまでのSV(サイドバルブ)方式に代わり、より近代的なOHV方式が採用されていました。
一方で、点火系はバッテリー&コイルとマグネトーによる二重系統式から、バッテリー&コイル式のみに簡略化されました。シルヴァーゴーストよりも高い4.8:1の圧縮比と1基の自社製キャブレターから発生する最高出力は、実際は50hp/3,000rpmに達したものの、ピークパワーの表記は意味をなさないとの同社の方針により、このモデルから「十分」との表記しか行われなくなりました。
仕様変更でトランスミッションやブレーキを改良
トランスミッションは、当初セントラルチェンジ式の3速MTが組み合わせられ、最高速度105km/hの性能を発揮しました。サスペンション形式は、従来のロールス・ロイス車と同様の4輪リジッド・リーフ式が踏襲され、ブレーキも当初は同様に後輪のみにドラム式が装着されました。販売価格はシャシーのみで1100ポンドで、シルヴァーゴーストよりもおよそ700ポンドも廉価に抑えられていました。
その後1925年に、トランスミッションが4速に多段化されるとともに、チェンジレバーの位置がドライバーズシート右側に移設されました。それと同時に、メカニカルサーボ付4輪ドラムブレーキが採用されました。そして1929年、後継モデル「20/25HP」のリリースにともない生産終了となりました。総生産台数は2,885台でした。