三菱自動車の2ドアクーペ「ギャランクーペFTO」は、1971年11月に発売が開始されました。前年に発売された2ドアハードトップ「コルトギャランGTO」の弟分的な位置付けで、それよりも一回りコンパクトなボディとエンジンを持つ大衆車クラスのパーソナルカーでした。又、同社の登録車として初のピラード・クーペ型の車種ともなりました。
ファースト・ノッチバックスタイルが特徴
スタイリングは、兄貴分のギャランGTOを彷彿とさせるボディラインを持ちながらも、より凝縮感のあるプロポーションを持ち、「ファースト・ノッチバック」と呼ばれる独特なCピラーのデザイン処理を行った事が特徴でした。又、コストダウンと生産合理化の為に、ボディ・パーツの多くを他のコルトギャランシリーズと共有していました。
ボディサイズは全長3,765mm×全幅1,580mm×全高1,330mmで、ギャランGTOと比較とすると全長が360mm短い一方で全幅は同一で、当時の国産車としては異例のショート&ワイドな縦横比を持っていました。又、コルトギャランシリーズとプラットフォームを共用しつつもホイールベースは120mm短縮された2,300mmで、車両重量は最軽量グレードで835kg、乗車定員は5人でした。
OHVエンジンでスタートし、M/CでSOHCエンジンに
エンジンは新開発の1.4L直4OHVの4G41型「ネプチューン」で、エントリーグレード「GⅠ」及び中間グレード「GⅡ」にシンブルキャブ仕様(最高出力86ps/6,000rpm、最大トルク11.7kgm/4,000rpm)が、最上級グレード「GⅢ」にはツインキャブ仕様(最高出力95ps/6,300rpm、最大トルク12.3kgm/4,500rpm)が搭載されました。駆動方式は他のギャランシリーズ同様FRで、トランスミッションは全車4速MTでした。
内装は黒を基調色とし、4連メーターが備わるインパネや3本スポークステアリング、バケットシートなどを採用したスポーティな雰囲気に溢れるものでした。そして1973年2月にマイナーチェンジを実施し、エンジンが新世代の直4SOHC「サターン」に置換されると共に、5速MT仕様が追加されました。同時に、グレード名称が全面的に変更されました。
グレード及び搭載エンジンは、「EL」「GL」「SL-5」が1.4Lシングルキャブ仕様の4G33型(最高出力92ps/6,300rpm、最大トルク12.5kgm/4,000rpm)、「GS」が1.6Lシングルキャブ仕様の4G32型(最高出力100ps/6,300rpm、最大トルク14kgm/4,000rpm)、「GSR」が1.6Lツインキャブ仕様の4G32型(最高出力110ps/6,700rpm、最大トルク14.2kgm/4,000rpm)でした。
この内「SL-5」「GS」「GSR」には5速MTが搭載され、「GSR」はオーバーフェンダーを装着し全幅が85mmワイド化されました。車両重量はやや増加し、「GSR」で875kgでした。次いで同年10月に安全対策を施すと共に、1.6Lに廉価グレード「SL」が追加されました。翌1974年10月に保安基準に適合させる為の改良を行い、「GSR」はオーバーフェンダーが廃止されました。同時に、「EL」と「GS」が廃止されました。
そして翌1975年3月、後継車種「ランサーセレステ」の発売に伴い生産終了となりました。ギャランクーペFTOは、トヨタの「カローラ/スプリンタークーペ」や日産の「サニークーペ」に対抗すべく誕生したモデルでしたが、販売網の差や強力なセールスポイントを持たなかった事が影響し、販売台数の面ではそれらに比べ伸びませんでした。