ベントレー・モーターズは1980年、デビュー以来15年が経過していた「Tシリーズ」に代わる新型高級車「ミュルザンヌ」をリリースしました。同時にデビューした親会社ロールス・ロイスの「シルヴァー・スピリット」とは、プラットフォームやボディ、基本メカニズムを共有する姉妹車種の関係にありました。
長く広く低いディメンションに
ボディタイプは従来同様4ドアセダンのみのラインナップで、エクステリア・デザインはシルヴァー・スピリットと異なる意匠のフロントグリルにより差別化が図られていました。ボディサイズは全長5,310mm×全幅1,890mm×全高1,490mmで、Tシリーズから全長・全幅が拡大された一方、全高は若干低められました。また、車両重量は2,245kgでした。
ホイールベースは従来同様2種類が用意され、その数値はショートホイールベース仕様が3,061mm、ロングホイールベース仕様が3,161mmでした。駆動方式はコンベンショナルなFRが踏襲され、エンジンも6.8L V8OHV2バルブ・SUツインキャブレター仕様がキャリオーバーされました。最高出力・最大トルクの数値は、公表されませんでした。
ターボモデルを追加
トランスミッションは3速トルコン式ATが組み合わせられ、最高速度190km/h・0-60mph加速9.6sの動力性能を発揮しました。サスペンションはフロント:ウィッシュボーン式/リア:セミトレーリングアーム式による4輪独立懸架で、ブレーキは4輪ディスク式が採用されました。その後、1982年のジュネーブ・モーターショーで、高性能版の「ミュルザンヌ・ターボ」がベールを脱ぎました。
搭載されたエンジンは6.8L V8OHVソレックス・シングルキャブレター+ギャレット・エアリサーチTO4ターボチャージャー仕様で、最高出力333ps/4,600rpm・最大トルク62.2kgm/2,450rpmという高いアウトプットを発生しました。3速トルコン式ATを介してのパフォーマンスは、最高速度217km/h・0-60mph加速7sを誇りました。
廉価版も登場
次いで1984年、ミュルザンヌをベースに内装や装備を簡略化して価格を引き下げた「エイト」がリリースされました。追って翌1985年には、6.8Lターボエンジンの出力をさらに高めるとともに、サスペンションを強化した改良版「ミュルザンヌ・ターボR」が登場しました。その最高速度は、235km/hに達しました。
続いて1986年、標準版ミュルザンヌに搭載されるNAエンジンがボッシュ燃料噴射仕様(最高出力204ps/4,000rpm)に変更されました。同時にATが4速に多段化され、最高速度は208km/hに向上しました。次いで翌1987年に、標準版ミュルザンヌがターボRと同一の足回りを持つ「ミュルザンヌS」に切り替えられました。
さらに1989年には、ヘッドランプが角型2灯式から丸型4灯式に変更されました。同時に、ターボRにエアロパーツが装着されるとともに、エンジンがボッシュ燃料噴射仕様となり最高速度が240km/hに向上しました。そして1992年、後継モデル「ブルックランズ」にバトンを渡し生産終了となりました。