BMWは1985年、1982年に2代目へとフルモデルチェンジされたアッパーミディアムセダン「5シリーズ」をベースとしたハイパフォーマンス版「M5」をリリースしました。1983年にリリースされたスポーツクーペ「M635CSi」譲りの高性能エンジンが搭載され、セダンとしては世界トップレベルの動力性能を誇りました。
エアロパーツなどにより差別化
4ドアセダンのみがラインナップされるボディは、5シリーズ譲りのスクエアかつプレーンなフォルムを踏襲する一方、スポイラー一体型のフロントバンパーやサイドスカート、リアスポイラーの採用などにより差別化が図られていました。ボディ・ディメンションは全長4,620mm×全幅1,700mm×全高1,400mm、ホイールベース2,625mmで、15mmローダウンされた全高をのぞき5シリーズと共通でした。
また、車両重量は1,430kgでした。駆動方式はFRを踏襲し、エンジンは3.4L直6DOHC24バルブNAボッシュ・モトロニック燃料噴射仕様(最高出力286ps/6,500rpm・最大トルク34.7kgm/4,500rpm)が搭載されました。5速MTとの組み合わせによるパフォーマンスは、最高速度245km/h・0-100km/h加速6.5sを誇りました。
同一仕様のエンジンを搭載するM635CSiと比較すると、空力特性に劣るため最高速度は若干低かったものの、車両重量が軽いため0-100km/h加速タイムでは勝っていました。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン式による4輪独立懸架で、ブレーキはフロントがベンチレーテッド型の4輪ディスク式が採用されました。
もうひとつのMモデルも存在
また、ホイール&タイヤは前後ともに165TR390ホイールと220/55VR390タイヤの組み合わせが装着されました。一方インテリア面では、Mテクニックスポーツ製のスポーツシートやステアリングホイールの採用などにより5シリーズとの差別化が図られていました。ところで、同じ1985年に誕生したもうひとつのMモデルとして、「M535i」が存在しました。
M5には標準で備わるエアロパーツやスポーツシートなどはセットオプション扱いで、搭載されるエンジンも異なり3.4L直6SOHC24バルブ仕様でした。スペックは最高出力215ps/5,200rpm・最大トルク31.6kgm/4,000rpmという控えめなもので、組み合わせられるトランスミッションも4速MTとなっていました。そのパフォーマンスは、最高速度223km/h・0-100km/h加速8.9sというものでした。
そして1987年にM5/M535iともに生産を終了、翌1988年に3代目5シリーズをベースとしたE34型M5がリリースされました。日本市場においては、1985年にM535iが、モデル末期の1987年にM5の導入が開始されました。最高出力は本国仕様よりも低下しており、前者が185ps、後者が260psとなっていました。