BMWは2004年7月、同年5代目へとフルモデルチェンジされたアッパーミディアムモデル「5シリーズ」をベースとしたハイパフォーマンス版、E60型「M5」を発表しました。先代E39型からパワートレインを一新、量産セダンとして世界初のV10エンジンが採用されました。それにより、定評のあったパフォーマンスがさらに向上しました。
電子制御ダンパーを採用
ボディタイプは当初4ドアセダンのみの設定で、スタイリングは先代からフロントまわりの造形が刷新されるとともに、グラマラスなフォルムに変貌するなどイメージが一新されました。また、専用のフロント&リアエプロンやワイドフェンダー、4本出しマフラーなどの採用により、5シリーズとの差別化が図られていました。空力特性の指標となるCd値は、先代と同一の0.31でした。
ボディサイズは全長4,855mm×全幅1,846mm×全高1,469mmで、先代から一回り拡大されました。ホイールベースは先代比で60mmほど長い2,889mmで、車両重量は35kg増加し1,830kgとなっていました。サスペンション形式は、先代同様のフロント:ストラット式/リア:インテグラルアーム式が踏襲されるとともに、電子制御可変ダンパーの「EDC」が採用されました。
100ps以上のパワーアップを実現
駆動方式はFRを踏襲し、エンジンは先代の5L V8DOHC32バルブNAに代わり5L V10DOHC40バルブNAが搭載されました。スペックは最高出力507ps/7,750rpm・最大トルク53kgm/6,100rpmで、先代から107ps/2kgmの向上を果たすとともに、より高回転型の性格に変貌しました。組み合わせられるトランスミッションは、従来の6速MTに代わり「SMG」と呼ばれる7速AMTが採用されました。
また、2つの走行モードを選択できる「DSC」(ドライビング・ダイナミクス・プログラム)が採用されたほか、最高出力の設定を400psと507psに切り替えられる「パワーボタン」が装備されました。パフォーマンスは、最高速度は通常リミッターの介入により先代と同一の250km/hに留まるものの、リミッターを解除した場合330km/hに達しました。
0-100km/h加速タイムは4.7sで、先代から0.6s短縮されました。ブレーキは、フロントが374mm、リアが370mmに大径化されたディスクローターが備わる4輪ベンチレーテッド・ディスク式が装備され、タイヤは先代よりもワイドなフロント:255/40ZR19/リア:285/35ZR19が装着されました。
また、走行性能向上に係る機構として、新たにCBC(コーナーリング・ブレーキ・コントロール)やEBV(エレクトロニック・ブレーキ・フォース・ディストリビューション)が採用されました。一方インテリア面は、専用デザインのインパネやセンターコンソール、「M Drive」ボタン付きのステアリングホイールなどが採用されました。
その後2007年に、5ドアステーションワゴン版の「M5ツーリング」が追加されました。そして2010年、5シリーズのフルモデルチェンジにともない生産を終了、翌2011年に新型5シリーズをベースとしたE10型M5がリリースされました。E60型M5の日本市場初上陸は2004年11月で、従来の左ハンドル仕様に加え右ハンドル仕様が選択できるようになりました。