BMWは2007年、2006年に発売した新型「3シリーズクーペ」をベースとしたハイパフォーマンスモデル、E92型「M3クーペ」を発表しました。先代E46型M3が生産終了となって以来1年ぶりの復活となったこの新型は、従来の直6エンジンに代わり新開発のV8エンジンを搭載、パフォーマンスのさらなる向上を実現していました。
ボディパネルを再設計
スタイリングは3シリーズクーペと共通のイメージにまとめられていたものの、ドアやウィンドウ、トランクリッドをのぞくボディパネルが再設計されていました。また、軽量・低重心化を図るためカーボン製ルーフが採用されたことも相違点のひとつでした。ボディサイズは全長4,615mm×全幅1,817mm×全高1,418mmで、E46型M3に対しても3シリーズクーペに対しても一回り拡大されていました。
ホイールベースは2,760mmで、先代から30mmほど延長されました。また、車両重量も80kgほど増加し1,655kgとなっていました。サスペンションは設計が一新され、フロントのストラット式がシングルジョイントスプリング型からダブルジョイントスプリング型に変更されるとともに、リアはセントラルアーム式に代わり5リンク式が採用されました。
エネルギー回生システムを採用
駆動方式は従来同様FRのみの設定で、3シリーズクーペに設定されたフルタイム4WD仕様は用意されませんでした。エンジンは上級モデル「M5」用V10をベースにシリンダーを2本減らした4L V8DOHC NAで、スペックは最高出力が従来の3.2L直6から77psアップの420ps/8,300rpm、最大トルクが3.6kgmアップの40.8kgm/3,900rpmとなっていました。
また、このエンジンはブレーキエネルギー回生システムも備えており、効率や燃費の向上も実現していました。トランスミッションは当初は6速MTのみの設定で、パフォーマンスは最高速度こそリミッターの介入により従来と同一の250km/hに留まるものの、0-100km/h加速タイムは0.4s短縮され4.8sとなりました。
セダンとカブリオレを追加
また、タイヤは先代からワイド化が図られ、フロントに245/40ZR18、リアに265/40ZR18が装着されました。そして翌2008年、4ドアセダン版の「M3セダン」(E90型)と、電動リトラクタブルハードトップが備わる2ドア・4シーター仕様のオープンモデル「M3カブリオレ」(E93型)がラインナップに加わりました。さらに、7速DCT仕様が追加されたのもこの年のことでした。
次いで2009年のマイナーチェンジでセダンのリアまわりの造形が一新されるとともに、全車のインフォテインメントシステム「iDrive」が刷新されました。追って翌2010年には一部改良が実施され、全車にアイドリングストップ機構が採用され燃費が向上するとともに、クーペのエクステリアが変更されました。
その後2012年に3シリーズがフルモデルチェンジされたのちも生産が続けられたものの、翌2013年12月に新型M3(F80型)が発表されその役目を終えました。日本市場においては、2007年9月にクーペ・MT仕様の導入が開始されました。追って翌2008年3月にセダン・MT仕様が追加され、さらに同年7月にはクーペ/セダンにDCT仕様が追加されました。