シトロエンのアッパーミドルクラスセダン/ワゴン「CX」は、1955年に登場した「DS」の後継モデルとして1966年から開発が開始され、1974年のパリサロンでデビューを飾りました。空気抵抗係数を表す車名「CX」そのままに空力特性改善による高速性能の向上と、静粛性の改善がテーマとされました。一方、パワートレインやシトロエン独自のサスペンション機構はDSから踏襲されました。
ペリメーターフレームを採用
車体の構造は1970年発売の「GS」で採用されたモノコック構造ではなく、ロードノイズ低減の為に敢えてペリメーター式のフレームにボディを架装する構造が採用されました。ボディタイプは、まず独立したトランクルームを備える4ドアセダンが登場しました。6ライトウィンドウとファーストバックのプロポーションを採用し、GSを拡大したような雰囲気を備えていました。
初期型のボディサイズは全長4,630mm×全幅1,730mm×全高1,360mmで、DSよりもそれぞれ180mm×60mm×110mm縮小され、ホイールベースも280mm短縮され2,845mmとなりました。車両重量は1,265kgで、DSの最終型から100kg程軽量化されていました。そしてサスペンション、ステアリング、ブレーキにはDS譲りの油圧制御システム「ハイロドーリック・システム」が採用されました。
サスペンションはガスとオイルを用いた「ハイドロ・ニューマチック・サスペンション」で、形式はフロントがDSのハーフウィッシュボーン式からダブルウィッシュボーン式に変更され、リアはトレーリングアーム式が踏襲されました。ブレーキはGS同様4輪ディスク式となり、パワーステアリングは1970年に発表された「SM」に次いで車速感応式及びセルフセンタリング式が採用されました。
エンジンはDS譲りのOHVユニット
駆動方式はFFを踏襲し、エンジンは開発段階では様々なユニットが検討されたものの、最終的にDSの直4OHVキャブレター仕様ユニットがキャリオーバーされました。このユニットは基本設計が1930年代まで遡る古典的なもので、CXを構成するコンポーネンツで最も平凡な部分と言われました。グレードは2L(最高出力102hp)の「2000」と2.2L(最高出力112hp)の「2200」が用意されました。
トランスミッションはDSのような油圧式セミATではなく、オーソドックスな4速MTが組み合わせられました。そして翌1975年に、2.2L直4ディーゼルエンジン(最高出力66hp)を搭載する「2200ディーゼル」が追加されると同時に、2.2Lガソリン車に上級グレードの「パラス」と、電磁クラッチとトルコンを組み合わせた3速セミATの「Cマチック」が追加されました。
次いで1976年に、ステーションワゴンの「ブレーク」(5人乗り)及び「ファミレール」(7人乗り)と、セダンの高級バージョン「プレステージュ」が追加されました。いずれのモデルも、ホイールベースが3,095mmに延長されていました。更に同年のパリサロンで、「2200」に代わるモデルとして排気量を2.4L(最高出力115hp)に拡大した「2400」がデビューしました。
次いで1977年に、2.4L直4電子燃料噴射仕様エンジン(最高出力128hp)と5速MTを搭載する「2400GTI」が追加され、更に1978年には、2.5L直4ディーゼルエンジン(最高出力75hp)を搭載する「2500ディーゼル」が登場しました。続いて1979年、「2000」に代わるモデルとして、新開発された2L直4SOHCエンジン(最高出力106hp)を搭載する「アテナ」及び「レフレクス」がデビューしました。
ターボ車を追加
次いで1980年にCマチックに代わり3速トルコン式が設定され、続いて1982年にはアテナ/レフレクスのグレード名がそれぞれ「20」「20TRE」に変更されました。更に1983年、ディーゼル車に2.5L直4ターボエンジン(最高出力95hp)を搭載する「25RDターボ/25TRDターボ」が、追って翌1984年にはガソリン車にも2.5L直4ターボエンジン(最高出力168hp)を搭載する「25GTIターボ」が追加されました。
そして1985年にビッグマイナーチェンジが実施され、ウレタンバンパーの採用やインパネのデザイン変更が行われると共に、2.2L直4SOHCエンジンを搭載する「22TRS」が追加されました。次いで1986年と1987年にターボ車にインタークーラーが装備され、ガソリンターボ車が「25GTIターボ2」(最高出力168hp)に、ディーゼルターボ車が「25TRDターボ2」(最高出力120hp)になりました。
そして1989年に後継モデルの「XM」が登場した為、セダンが同年に、ブレイクは1991年に生産終了となりました。