1993年当時、自社製SUVを持たなかったホンダは、提携関係にあった英国ブリティッシュ・レイランド社から「ランドローバー・ディスカバリー」のOEM供給を受け、同年11月から「クロスロード」と名付けベルノ店での販売を開始しました。フロントマスクとエンブレムの相違を除き中身はディスカバリーそのもので、ヘビーデューティーな使用に耐える仕様もそのまま踏襲されました。
ラダーフレームシャシー+4輪リジッドサスを採用
シャシーはスチールボックス構造を採用した強固なラダーフレーム式で、サスペンションは4輪リジッド/コイル式という古典的な形式でした。ボディパネルには強化アルミニウムが採用され、軽量化と低重心化が図られていました。ボディタイプは本家同様、5人乗りの3ドアと収納式対向サードシートが備わる7人乗りの5ドアが用意されました。
スタイリングも前述の点を除けば本家と共通で、ルーフ後半を一段高くしたステップドルーフと、「アルパインライト」と呼ばれるリア・クォータールーフウィンドウが備わっていました。ボディサイズは全長4,465mm(3ドア)/4,535mm(5ドア)×全幅1,800mm×全高1,950mm、ホイールベースは2,540mmで本家と全く同一であり、車両重量も同じ仕様同士の比較において同一となる1,920kg(3ドア)/1970kg(5ドア)でした。
エンジンはディスカバリー用最大の3.9Lを採用
駆動方式はフルタイム4WDで、ハイ/ローギアの選択とセンターデフロックが可能でした。エンジンは、本家に用意されていた2.5L直4ターボディーゼル/3.5L V8ガソリン/3.9L V8ガソリンの中から、最も強力な3.9L V8ガソリン(最高出力180ps/4,750rpm・最大トルク31.8kgm/3,100rpm)が選択されました。このエンジンは、アルミ製エンジンブロック&シリンダーヘッドの採用による軽量・低重心設計が特徴でした。
トランスミッションは、ロックアップ機構付きの電子制御4速トルコン式ATが組み合わせられました。又、ブレーキは大型の4輪ディスクブレーキでした。一方室内は、前述のボディ後半部分の設計により広く明るい室内空間を実現すると同時に、大型ドアポケットやサンバイザー上のマップマット、リアルーフのネットポケットなど、豊富な収納スペースが用意されている点が特徴でした。
装備面では、衝突時に乗員がシート下に滑り込むのを防止するアンチサブマリン・シートプレートや、緊急時に速やかにエンジンを停止させるイナーシャ・キルスイッチ、ドアミラーの曇りを防止するリモコン・ヒーテッド・ドアミラーが備わっていました。初代クロスロードの販売は、自社製のSUV「CR-V」が登場した後も継続され、ディスカバリーがフルモデルチェンジする前年の1998年に販売終了となりました。