シトロエンは1970年のパリサロンにおいて、排気量2.2Lの「DS」と排気量0.6Lの「アミ」の間を埋めるモデルとして、排気量1Lの新型大衆車「GS」を発表しました。排気量の割に大きなボディというシトロエン独特の設計ポリシーが踏襲された他、大衆車でありながらDS譲りの高度な「ハイドロ・ニューマチック・サスペンション」が導入された事が大きな特徴でした。
ボディは3タイプを用意
ボディの構造はスケルトン構造であったDSとは異なり、モノコック構造が採用されました。ボディ形状は、まず6ライトウィンドウの4ドアセダンが登場し、デビュー翌年に5ドアステーションワゴンの「ブレイク」と2ドア商用バンの「セルビス」が追加されました。スタイリングは、特にセダンには空力特性を追求したDS譲りの流麗なフォルムが備わっていました。
ボディサイズは全長4,120mm×全幅1,608mm×全高1,350mmで、リッターカーとしてはかなり大柄であった他、2,550mmというロングホイールベースも特徴でした。一方車両重量は880kgと軽量に抑えられており、その為ステアリングシステムはDSのようなハイドローリック・システムによる油圧アシストを持たないノンパワー方式でした。
前述のようにハイドロ・ニューマチック方式を採用したサスペンションの形式は、フロントがダブルウィッシュボーン式、リアがトレーリングアーム式でした。ブレーキは、このクラスとしては例外的な4輪ディスクブレーキが奢られました。エンジンは新開発された空冷1Lフラット4SOHC(最高出力56ps/最大トルク7.1kgm)で、トランスミッションは4速MTが組み合わせられました。
短命に終わったロータリーエンジン車
そしてデビュー翌年には、電磁クラッチを採用した3速セミATが追加されました。次いで1972年に、加速性能に対するユーザーからの不満の声に対処する為、排気量を1.2Lに拡大しアウトプットを最高出力59ps/最大トルク8.9kgmに高めた「1220」が追加されました。更に1973年、プロジェクトの段階から搭載が検討されていたロータリーエンジンを採用したモデル「ビロトール(Birotor)」が追加されました。
497.5cc×2ローター仕様のユニットは、レシプロモデルを大幅に凌ぐ最高出力107ps/最大トルク14kgmのアウトプットを発生し、最高速度は175km/hに達しました。しかし、翌1974年にシトロエンがプジョー傘下に入ると、1975年にはプジョーの意向により早くも生産終了に追い込まれました。その3年後の1978年、GSのエンジンが1.1Lに拡大され、最大トルクが8.1kgmに向上しました。
そして翌1979年には、最高出力65ps/最大トルク9.4kgmの1.3Lユニットを搭載するスポーティグレード「X3」が追加されました。追って同年9月にマイナーチェンジを受け「GSA」となり、バンパー形状やインパネのデザインが一部変更されると共に、セダンにテールゲートが設けられました。同時に、X3のトランスミッションが5速化されました。
その後ニューモデルの「ヴィザ」や「BX」が登場してからもGSの人気は根強く、1986年まで生産が継続されました。16年間での総生産台数はおよそ247万台でした。