「ダットサン・スポーツDC-3」は、1952年1月に発売され、日産自動車として、又国産車としても戦後初のオープン・スポーツカーとなりました。当時は、まともな性能を備えた国産乗用車は一部に限られる状況でしたが、そのような中で趣味性の高いコンバーチブルタイプの乗用車が発売された事は、画期的な出来事でした。
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全幅は1,360mm。コンパクトでモダンなボディ
ボディは、独立したフロントフェンダーを持つ1950年代初頭の自動車らしいスタイリングながら、サイドステップはなく、当時の国産車としてはモダンな雰囲気を醸すものでした。後席の備わる4人乗り仕様で、雨天時には幌を立てる事が可能であった他、フロントウィンドウを前方に倒してフルオープンエアモータリングを楽しむ事も可能でした。
ボディサイズは、全長3,510mm×全幅1,360mm×全高1,450mmという、現在の軽自動車程度のコンパクトなものでした。ホイールベースは2,150mmで、車両重量は750kgと軽量に仕上げられていました。インテリアは、4連メーターが並ぶダッシュボードや3本スポークステアリングを備え、スポーツカーらしい雰囲気を醸していました。
860cc の直4 SV(サイドバルブ)で最高出力20ps
エンジンは、DC-3に先駆け1950年に発売されたセダン型乗用車「DB-2型」に搭載されていたD10型エンジンが採用されました。排気量860cc の直4 SV(サイドバルブ)で、最高出力20ps/3,600rpm、最大トルク4.9kgm/2,000rpmのスペックを持ち、3速MTとの組み合わせにより最高速度80km/hの性能でした。SV方式は欧米では既に旧式となっており、性能面でも不十分なものでした。
駆動方式は当時として一般的なFRでした。サスペンションは、フロントが横置きリーフ、リアが平行リーフ・リジッドで、ブレーキは4輪ドラム式でした。DC-3は限定で50台が生産されました。
性能は低い。でも、とても偉大な存在
同時代の同じカテゴリーに属する外国車では、英国の「MG・TD」がDC-3より一回り大きいボディに58psの最高出力を発生する1.3L直4 OHVエンジンを搭載し、4速MTを介して最高速度124km/hに到達する性能を備えていました。それと比べ動力性能の点で格段の差があった他、当時の国産車の常で、操縦安定性や乗り心地の点でも及びませんでした。
しかしながら、この貴重な経験が後に生かされ、DC-3の生産終了から5年後の1959年に、遥かに性能と完成度の優れた「ダットサン・スポーツ1000」となって結実する事となりました。同時に、車としての完成度は別として、現在販売されている「フェアレディZ」の偉大なる始祖と言う事が出来る存在となっています。
後継モデル:ダットサン1000ベースのオープンスポーツ