フェラーリ「348」は、それまで同社の主力モデルであった「308/328」の後継モデルとして、1989年にデビューを飾りました。「348」という車名は、エンジンが3.4Lで8気筒である事が由来となっています。又、前期モデルは末尾に「tb」又は「ts」が付きますが、「t」はトランスミッションが横置きであった事から、横置き=tranverseの頭文字を取っています。
テスタロッサ風スタイリングとセミモノコック構造
ボディは、308/328に続きピニンファリーナによるデザインで、当時同社のフラッグシップモデルであった「テスタロッサ」を彷彿とさせる、サイドのエアインテークとリアのルーバーが特徴的でした。ボディサイズは、全長4,230mm×全幅1,895mm×全高1,170mmで、308/328よりも全幅が大幅に拡大されました。ミッドシップレイアウトで2シーターという基本構成は、308/328から踏襲されました。
日本仕様の車両重量は1,465kgで、欧州向けよりも70kg程重く、日本仕様328の最終型と比較すると180kg程増加していました。ボディのバリエーションは、固定ルーフのクーペ(ベルリネッタ)「tb」と脱着式ルーフを備えるタルガトップ「ts」の2種類が用意されました。又、ボディの構造が308/328とは大きく変わり、それまでの鋼管スペースフレーム構造からセミモノコック構造となりました。
排気量を拡大し、パフォーマンスが向上
サスペンションは308/328と同様、4輪ダブルウィッシュボーン式で、4輪ベンチレーテッドディスクブレーキを装備していました。搭載されたエンジンは、328から受け継いだDOHC V8の「F119D」型でしたが、ボア・ストロークとも拡大され200ccアップの3.4Lとなり、最高出力300ps/7,000rpm、最大トルク31.6kgm/4,000rpmのアウトプットを発生しました。
エンジンのマウント方式は、前後重量配分の最適化を図る為、308/328の横置きから縦置きに変わりました。トランスミッションは5速MTで、前述のように横置きに搭載されました。そのパフォーマンスは、最高速度275km/h、0-100km/h加速5.6秒で、328GTBよりそれぞれ12km/h、0.8秒向上していました。
バリエーション追加とマイナーチェンジ
1993年に入ると、まずフルオープンボディの「スパイダー」が追加され、更に5月に「tb/ts」がマイナーチェンジを受け「GTB/GTS」となるなど、大きな動きがありました。共に、フロントリップスポイラーの新設などエクステリアが変更された他、エンジンの制御システムが新バージョンとなり、型式が「F119G」となりました。
この改良型エンジンは、最高出力320ps/7,300rpm、最大トルク33kgm/4,200rpmと従来より高回転高出力型となりました。それに伴い、最高速度は7km/h向上し282km/hとなり、0-100km/h加速タイムは0.2秒短縮され5.4秒となりました。
しかし、翌1994年に後継モデル「F355」が登場すると、役目を終えた348は程なくして生産終了となりました。348は、操縦安定性にピーキーな面があり、決して万人向けとは言えませんでしたが、如何にもフェラーリらしい個性を濃厚に備えていました。同時代のライバルであったホンダNSXが、万人に扱い易い特性を備えていたのとは好対照でした。