フェラーリは1968年のパリサロンで、それまでの「275」シリーズに代わるニューモデル「365GTB/4」を発表しました。曲線的で抑揚あるボディラインが特徴だった275シリーズとは異なり、時代の最先端を行く直線的かつシンプルなフォルムが備わっていました。同時に、エンジンの排気量拡大とそれに伴うアウトプットの向上により、世界トップレベルの動力性能を獲得しました。
ボディはクーペとスパイダーを用意
ボディタイプは275シリーズの初期型同様、フィクスドヘッドのクーペとオープンボディのスパイダーが用意されました。デザインを担当したのは275シリーズ同様ピニンファリーナで、初期型はプレクシグラスでカバーされたヘッドランプを備えていました。しかし、1970年に米国の保安基準に対応したリトラクタブル・ヘッドランプ仕様の対米輸出モデルが登場すると、1971年までに全モデルがこの仕様に変更されました。
ボディサイズは全長4,425mm×全幅1,760mm×全高1,245mmで、後期型275GTB/4から全長と全幅がそれぞれ35mmずつ拡大されました。ホイールベースは同一の2,400mmで、車両重量はクーペで1,280kgとなり、275GTB/4から20kg軽量化されました。乗車定員は両ボディとも2人で、駆動方式は引き続きFRが採用され、サスペンション形式も275シリーズ同様4輪ダブルウィッシュボーン式が踏襲されました。
大排気量エンジン搭載で性能アップ
エンジンは一新され、275シリーズの3.3L に対し4.4Lまで排気量が拡大されたV12DOHCユニットが採用されました。6基のウェーバー40OCN20キャブレターを装備し、8.8:1の圧縮比から最高出力352HP/7,500rpm・最大トルク44kgm/5,500rpmのアウトプットを絞り出しました。この数値は、275GTB/4を52HP/14kgm上回るもので、5速MTを介しての最高速度は278km/hに達しました。
性能面ではライバル関係にあった「ランボルギーニ・ミウラ」と並び、当時の市販車として世界最速の1台でした。又、性能向上に対応すべくホイールとタイヤもアップグレードされ、275GTB/4の7.0×14ホイール+205HR14タイヤに対し、7.5L×15ホイール+215/70VR15タイヤが採用されました。その他、4輪ディスクブレーキを踏襲すると共に、ステアリング形式も275シリーズ同様リサーキュレーティング・ボール式が採用されました。
生産は、ミッドシップレイアウトを採用した後継モデル「365BB」が登場した1973年まで行われ、クーペ/スパイダーを合わせ1,406台が生産されました。又、基本的にロードカーとして設計された車種であったものの、レースでも活躍を見せ、1972年から1974年に掛けてル・マン24時間レースのGTクラスで3年連続優勝を果たしました。