フェラーリは1973年のパリサロンで、それまでのV6エンジン搭載の「ディーノ246GTB/GTS」に代わる新たなモデルとして、新開発されたV8エンジンを搭載する「ディーノ308GT4」を発表しました。ディーノ246を含め従来のフェラーリ車は2シーターが恒例であったのに対し、オケージョナル用の後席が備わる2+2シーター仕様となった事が特徴でした。
ベルトーネ・デザインを採用
シャシーは基本的にディーノ246と同一で、ボディはフィクスドヘッドのクーペのみが用意されました。デザインはフェラーリ御用達だったピニンファリーナではなく、ガンディーニ率いるベルトーネに委託されました。スタイリングは曲線的で抑揚あるボディラインを持っていた246とは対照的に、直線基調の落ち着いたイメージでまとめられていました。
ボディサイズは全長4,300mm×全幅1,790mm×全高1,210mmで、ディーノ246からそれぞれ60mm×90mm×30mm拡大されました。又、ホイールベースは2+2化に伴い一気に210mm延長されて2,550mmとなりました。従来通りミッドシップマウントされるV8DOHCエンジンはオールアルミ合金製で、4基のウェーバーDCNFキャブレターが装備されました。
スペックはディーノ246を遥かに凌駕する最高出力250HP/7,000rpm・最大トルク29kgm/5,000rpmで、トランスミッションは従来同様5速MTが組み合わせられました。その他、4輪ダブルウィッシュボーン式のサスペンション形式や、ベンチレーテッドタイプの4輪ディスクブレーキ、ラック&ピニオン式のステアリング形式などはディーノ246から踏襲されました。
イタリア国内専用車208GT4を追加
又、米国仕様は排出ガス規制をクリアする為にスペックが低下し、最高出力227HP/7,000rpm・最大トルク28kgm/5,000rpmとなっていました。それでも、最高速度236km/h・0-400m加速14.8sという十分以上のパフォーマンスを発揮しました。そして1975年に、イタリア国内専用モデルの「ディーノ 208GT4」が追加されました。
このモデルでは、2Lを超える排気量に多額の税金が課せられるイタリアの国情を鑑みて、V8ユニットの排気量が2L(1991cc)に縮小されました。スペックは最高出力168HP/7,700rpm・最大トルク19kgm/4,900rpmとなり、パワーの低下を補う為5速MTのファイナルギアレシオが低められました。動力性能は最高速度217km・0-400m加速16sとなり、外観面ではフォグランプが省略された点が308GT4との相違点でした。
そして1976年にブランド名がディーノからフェラーリに変更された後、1980年に後継モデル「モンディアル」に後を譲り生産終了となりました。308/208GT4は、ロングホイールベース化により246時代の俊敏な操縦性は失われたものの、乗り心地の面ではプラスに作用しました。又、手荷物の置き場もなかった246と異なり、狭いながらも後席が設けられた事は実用性の面でアドバンテージとなりました。
先代モデル:ディーノ206/246