マセラティは1968年のトリノ・ショーで、2年前にリリースした2シーター・グランツーリスモ「ギブリ」の4シーターバージョンのプロトタイプを参考出展、翌1969年のジュネーブ・ショーで「インディ」と名付けられた市販バージョンが公開されました。大人4人が座れる居住性が確保された他、同社のグランツーリスモらしい豪華な仕様を持つモデルでした。
リトラクタブルヘッドランプを採用
エクステリア・デザインを手掛けたのは、ギブリと同時にデビューした2+2GT「メキシコ」と同様、カロッツェリア・ヴィニアーレに所属していたジョバンニ・ミケロッティでした。スタイリングはジウジアーロのデザインによるギブリ同様に、リトラクタブルヘッドランプを採用した長く低いノーズと、切り落としたようなコーダロンカ・テールを持つ他、リアにはテールゲートが新設されました。
ボディサイズは全長4,740mm×全幅1,760mm×全高1,220mmで、ギブリから全長が50mm、全高が60mm拡大された一方、全幅は40mm縮小されていました。ホイールベースは50mm長い2,600mmに設定され、車両重量は200kg重い1,500kgでした。サスペション形式は、ギブリ同様のフロント:ダブルウィッシュボーン式/リア:リジッド・リーフ式が採用されました。
又、4輪ディスク式のブレーキやリサーキュレーティング・ボール式のステアリング形式も受け継がれました。一方、ホイール&タイヤは1インチ小径化された14インチが採用されました。駆動方式は他のマセラティ車同様FRで、エンジンは当初4.2L V8DOHC(最高出力264ps/5,500rpm・最大トルク36.9kgm/4,000rpm)が搭載され、ZF製5速MT又はボルグワーナー製3速トルコン式ATと組み合わせられました。
M/Cで高性能版を追加
最高速度はMT車で250km/hでした。一方インテリアは、レザー製のシートやドア内張り、ナルディ製のステアリングホイールなどが備わる他、ステアリングにはパワーアシストやチルト機構が備わっていました。そして1970年のトリノ・ショーで、内外装デザインを変更すると共に装備の充実を図ったマイナーチェンジ版が発表されました。
この新型には、新たに最高出力294ps/5,500rpm・最大トルク39kgm/3,800rpmのアウトプットを発生する4.7Lエンジン搭載車が設定されました。次いで1973年に、北米向け「インディ・アメリカ」がマイナーチェンジを受け、エクステリアの一部変更やシトロエン譲りのハイドローリック・システムの採用と共に、エンジンが「ギブリSS」に搭載されていた4.9L V8に置換されました。
スペックは最高出力320ps/5,500rpm・最大トルク49kgm/4,000rpmに向上、それに伴い最高速度は265km/hにアップしました。インディの生産は1976年まで続けられ、総生産台数は1,136台でした。