フェラーリは2011年1月のジュウネーブ・モーターショーで、4シーター・グランツーリスモ「612スカリエッティ」の後を継ぐニューモデル「FF(フェラーリ・フォー)」を発表しました。それまでと同等以上の後席スペースが確保された他、フェラーリとして初の4WD方式を採用すると共に、これも同社初の3ドア・シューティングブレークのボディ形状となった事がトピックでした。
ボディのデザインは、引き続きピニンファリーナの手により行われました。スタイリングは、シューティングブレークに相応しく水平に長く伸びたルーフが特徴で、2ドアクーペであった612スカリエッティから大きく変貌を遂げました。ボディサイズは全長4,907mm×全幅1,953mm×全高1,379mmで、612スカリエッティから全高が若干高くなった事を除きほぼ同等の大きさでした。
フロントへの駆動力は最大20%
ホイールベースは40mm長い2,990mmとなり、車両重量は丁度100kg軽い1,790kgとなりました。パワートレインのレイアウトは、従来通りエンジンをフロントに、トランスミッションをボディ後方にレイアウトするトランスアクスルレイアウトが踏襲された一方で(前後重量配分は47:53)、駆動方式が後輪駆動から「4RM」と呼ばれるフルタイム4WDに変更されました。
このシステムは、1~4速のギアを選択時に後輪がスリップすると前輪に動力を分配。センターデフを持たない構造である為、一般的な4WDシステムよりも大幅な軽量化と低重心化を実現していました。エンジンは、最高出力650.5HP/8,000rpm・最大トルク70kgm/6,000rpmのアウトプットを発生する6.3L V12直噴NAが搭載されました。
フェラーリ最強のスペックを実現
612スカリエッティに搭載された5.7L V12ユニットの最高出力532.5HP/7,250rpm・最大トルク60kgm/5,250rpmを大きく凌駕し、当時のフェラーリ車として最強のスペックを実現しました。トランスミッションは、612スカリエッティの6速MT及び6速セミATから、7速DCTに変更されました。パフォーマンスは、最高速度が15km/hアップの335km/h、0-100km/h加速が0.3s短縮された3.7sでした。
同時に、アイドリグストップ機構の採用などにより環境性能の向上も図られ、CO2排出量は612スカリエッティの475CO2g/kmから366CO2g/kmに低減されました。その他、4輪ダブルウィッシュボーン式のサスペンション形式や、ラック&ピニオン式のステアリング形式などは612スカリエッティから受け継がれました。
又、4輪ベンチレーテッドディスク式を採用するブレーキのローター系は、前後とも612スカリエッティから大径化され、100km/hからの制動距離は僅か35mを実現しました。そしてインテリア面では、左右の前席背面にモニターが備わるリアエンターテインメントシステムが装備されるなど、ラグジュアリーな仕様となっています。