フィアットは1965年のジュネーブ・ショーにおいて、前年にリリースした大衆車「850(ベルリーナ)」をベースとした2シーター・オープンモデル「850スパイダー」を発表しました。同時発表のクーペと同様、シャシーやRRの駆動方式、パワートレインなどベルリーナのメカニズムを踏襲しながら、ベルリーナともクーペとも全く事なるデザインのボディが与えられました。
デザインはベルトーネが担当
エクステリア・デザインは社内スタッフによるベルリーナやクーペと異なり、カロッツェリア・ベルトーネに委託されました。そのスタイリングは、丸みを帯びた流麗なフォルムと、斜めに寝かせて装着されたヘッドランプが特徴でした。ボディサイズは全長3,782mm×全幅1,498mm×全高1,220mmで、ベルリーナよりも207mm長く73mm広く、そして165mm低いディメンションでした。
ホイールベースはベルリーナやクーペと共通の2,027mmで、車両重量はベルリーナより65kg、クーペより5kg重い735kgでした。サスペンション形式は、ベルリーナ/クーペ同様のフロント:ウィッシュボーン+リーフ式/リア:セミトレーリングアーム+コイル式で、リアに搭載されるエンジンは、ベルリーナ用843cc水冷直4OHVをベースに圧縮比アップやキャブレター変更などのモディファイが施されました。
アバルト・モデルも登場
それに伴い、最高出力は14ps程高い48.7psに、最大トルクは0.9kg程大きい6kgmに向上しました。殊に最高出力はクーペと比較しても約2ps高く、850シリーズ最強でした。4速MTを介しての最高速度は、ベルリーナより19km/h、クーペより5km/h高い140km/hでした。又、ブレーキはベルリーナの4輪ドラム式から、クーペ同様にフロントがディスク式にアップグレードされました。
そして翌1965年に、小型車のチューナーとして名高いアバルトの手によるコンプリートカー「OT1000スパイダー」がリリースされました。直4OHVエンジンは排気量が982ccに拡大され、最高出力62psのアウトプットを発生しました。一方ベースモデルは、1968年にエンジンの排気量を903ccに拡大した「850スポルトスパイダー」に移行しました。
アウトプットは最高出力52ps/最大トルク6.6kgmに向上し、最高速度は6km/h高い146km/hとなりました。同時に、北米の安全基準をクリアする為、ヘッドランプが一般的な直立した形状に変更されました。そして1971年にクーペが、1972年にベルリーナが生産終了となった後も販売が継続されたものの、同年末に後継モデル「X1/9」がデビューした事に伴い、翌1973年に生産を終了しました。