かつてサーブの自動車部門として存在したサーブ・オートモビルは、1966年に大衆車「96」のコンポーネンツを流用した2シーター・スポーツカー「ソネットⅡ」を発売しました。さかのぼること10年前の1956年に登場した先代モデル「ソネットⅠ」が試作車のみ6台の生産に終わっていたことから、ソネットⅡは同社初の量産スポーツカーとなりました。
デチャッタブルトップを採用
シャシーはソネットⅠ譲りのボックス型ながら、素材はアルミニウムからスチールに変更されてました。一方、ボディの素材はFRP製が踏襲されました。ボディタイプはデチャッタブル・ハードトップが備わる2ドアクーペで、スタイリングはソネットⅠからは大幅なモダナイズが図られていました。また、リアフードには実用に足るラゲッジスペースが設けられました。
ボディサイズは全長3,770mm×全幅1,440mm×全高1,110mmで、ソネットⅠから二回りほど拡大されました。一方で、ホイールベースは50mm短縮され2,160mmとなっていました。車両重量は710kgで、ソネットⅠからは110kg増加したものの絶対的にはなおも軽量でした。駆動方式はFFを踏襲し、エンジンは96譲りの水冷2ストローク841cc直列3気筒が搭載されました。
サーブ ソネットⅡの走行動画
エンジンをチューンナップ
圧縮比が9:1に高められるとともに、ソレックス・キャブレターがシングルからトリプルに変更されるなどのチューンナップが施され、アウトプットは96を大幅に上回る最高出力60hp/5,200rpm・最大トルク9.5kgm/4,000rpmを発生しました。トランスミッションは4速コラム式MTが組み合わせられ、最高速度150km/h・0-100km/h加速12.5sというライトウエイトスポーツカーとして十分な性能を発揮しました。
また、他のサーブ車同様、アクセル・オフ時のエンジンの焼き付きを防止する「フリーホイール機構」が備わっていました。サスペンション形式は、96同様のフロント:ウィッシュボーン/コイル式・リア:ビームアクスル/コイル式を踏襲し、ブレーキはフロントにディスク式、リアにドラム式が採用されました。また、タイヤは155×15サイズのラジアルタイヤが装着されました。
一方室内は、丸型5眼式メーターやFRPフレーム採用のバケットシート、ロールバーなどが備わるレーシーな仕様となっていました。その後1967年に、フォード製の4ストローク1.5L直4OHVエンジンを搭載する発展型「ソネットV4」が追加されました。一方ソネットⅡは、排出ガス規制の適用を逃れるため排気量を816ccに縮小した上で翌1968年まで生産されました。総生産台数は258台で、量産スポーツカーとしては決して成功したとは言えない数字でした。