フォード・モーターは1992年に開催されたシカゴ・モーターショーにおいて、スポーティカーの4代目「マスタング」をベースとした高性能バージョン「マスタングコブラ」を発表しました。開発にたずさわったのは同社のスペシャルビークルチーム部門で、性能および外観面でベースモデルとの差別化が図られました。そして翌年にフルモデルチェンジを受けたのち、長期間生産が続けられました。
初期型はハッチバックボディを採用
初期型のボディタイプは3ドアハッチバッククーペのみの設定で、エクステリア面では専用エアロパーツが採用されました。ボディ・ディメンションは全長4,562mm×全幅1,735mm×全高1,323mm、ホイールベース2,553mmでした。駆動方式はFRで、エンジンは専用チューニングが施された5L V8OHV「ウィンザー」が搭載されました。
スペックは最高出力238ps/最大トルク39.5kgmで、5速MTとの組み合わせにより最高速度241km/h・0-60mph加速5.9sのパフォーマンスを発揮しました。サスペンションは、フロント:マクファーソンストラット式/リア:コイル・リジッド式の形式を踏襲しながら専用チューニングが施されました。また、ブレーキは前後ともベンチレーテッド・ディスク式が採用されました。
2代目は2ドアクーペ&コンバーチブルに
そして翌1993年末、マスタングのフルモデルチェンジに伴いコブラも全面的にリニューアルされました。ボディタイプは当初2ドアクーペのみの設定であったものの、追って2ドアコンバーチブルがラインナップに加えられました。エクステリア・デザインは、直線基調の先代から丸みを帯びたものへと大きく変貌をとげました。
また、ベースモデルに対しては丸型のフロントフォグランプやLEDストップランプ内蔵リアスポイラーの採用などにより、差別化が図られていました。ボディサイズは全長4,610mm×全幅1,824mm×全高1,356mmで、先代から一回り拡大されました。また、ホイールベースも20mm延長され2,573mmとなりました。
駆動方式はFRを踏襲し、エンジンも5L V8がキャリオーバーされました。スペックは最高出力243ps/最大トルク39.4kgmで、先代同様の5速MTを介しての動力性能は最高速度225km/h・0-60mph加速6.3sと若干低下していました。サスペンション形式はフロントがマクファーソンストラット式、リアが4リンク・リジッド式で、ブレーキはABS付きの4輪ベンチレーテッド・ディスク式が採用されました。
高性能版を追加
その後1995年に、5.8L V8OHVエンジン(最高出力304ps)を搭載し、強化サスペンションを装備する250台限定モデル「コブラR」がリリースされました。このモデルは、フォグランプやリアシート、エアコン、ラジオ、パワーウィンドウなどを廃したスパルタンな仕様が特徴で、レーシング・ライセンスの所有者のみが購入することができました。
次いで1996年には、5L V8エンジンに代わり4.6L VDOHCの「モデュラー」エンジン(最高出力309ps)が搭載されました。続いて1999年にフェイスリフトが実施され、エクステリアの刷新とともにモデュラー・エンジンの最高出力が324psに向上しました。次いで2000年、コブラRが300台限定モデルとして5年ぶりに復活しました。
搭載されるエンジンは5.4L V8DOHC(最高出力390ps)で、ボディには専用のリアバンパーやリアウイングなどが装備された一方、かつてのモデル同様リアシートやエアコン、ラジオなどは省かれました。続いて2002年には、4.6L V8エンジンの最高出力を395psまで高めて搭載する「ターミネーターコブラ」がリリースされました。
そして翌2003年をもってコブラシリーズの生産は打ち切られました。