現ジャガーの前身にあたる英国の自動車メーカー「SSカーズ」は、1935年9月のロンドン・モーターショーにおいて、初めてジャガーブランドを冠するニューモデルとして4ドアセダンの「ジャガー・11/2l」及び「ジャガー・21/2l」と共に、「SS90」の後を継ぐ2シーター・スポーツカー「ジャガー・SS100 2 1/2l」を発表しました。
OHVエンジン搭載により高性能を発揮
創業者ウィリアム・ライオンズによりデザインが手掛けられたオープンボディは、大型ヘッドランプやメッシュのフロントグリル、クラムシェル・フェンダーなどSS90の流れを汲むスタイリングが受け継がれました。ボディのディメンションは全長3,810mm×全幅1,600mm×全高1,372mm、ホイールベース2,642mmで、SS90と全く同一でした。
一方、車両重量は60kg程増加し990kgとなっていました。サスペンション形式はSS90同様の4輪半楕円リーフ式で、駆動方式もコンベンショナルなFRが踏襲されました。当初搭載されたエンジンは、21/2lと共通の2.7L 直6OHVで、7.1:1の圧縮比と2基のSUキャブレターにより103ps/4,600rpmの最高出力を発生しました。このスペックは、SS90に搭載された同一排気量の直6SVエンジンを12ps凌ぐものでした。
4速MTを介しての動力性能は最高速度151km/h・0-60mph加速12.8sで、SS100の車名の由来ともなった最高速度100mph=160km/hの性能には届かなかったものの、SS90の最高速度143km/h・0-60mph17sを大きく凌ぎ、当時のスポーツカーとしてはトップレベルの性能を誇りました。その他の機構面では、ウォーム&ナット式のステアリング形式や4輪ドラム式のブレーキなどはSS90と共通でした。
新エンジンにより更なる高性能化を達成
そして3年後の1938年には、新開発の3.5L直6OHVエンジンを搭載する「SS100 3 1/2l」にバトンタッチされました。7.2:1の圧縮比とSUツインキャブレターにより発生する最高出力は2 1/2を大幅に上回る127ps/4,250rpmで、4速MTを介しての最高速度はついに100mphを超える163km/hに達すると共に、0-60mph加速も10.9sまで短縮されました。
しかし、翌1939年に第二次世界大戦が勃発、暫くの間生産は継続されたものの1940年夏になると軍需産業への転向を余儀なくされ、SS100を含む民生用乗用車の生産は中止されました。SS100は当時のスポーツカーとしては比較的廉価であったものの、5年間という短い生産期間の為生産台数は多くなく、2 1/2lと3 1/2lを併せ314台が製造されたに留まりました。
一方、戦後になってからの人気は根強いものがあり、1972年には英国のガレージメーカーであるパンサー・ウェストウインズ社の手により、レプリカモデル「パンサー・J72」が発売されました。