かつて存在していたアメリカの自動車メーカー、クライスラー(現フィアット・クライスラー・オートモビルズ)は、2005年に開催されたニューヨーク・オートショーにおいてジープ・ブランドの新型SUV「コマンダー」を発表しました。「グランドチェロキー」の上位に位置する同ブランドのフラッグシップモデルで、3列シート7人乗り仕様が設定されたことなどが特徴でした。
4種類の駆動システムを用意
ベースとなったのはWK型グランドチェロキーで、ボディタイプも同様に5ドアのみの設定でした。エクステリア・デザインは、7スリットのフロントグリルを踏襲しながらもよりスクエアなイメージを強めたフォルムが採用されました。ボディサイズは全長4,787mm×全幅1,900mm×全高1,826mmで、グランドチェロキーから一回り拡大されていました。
一方、ホイールベースは共通の2,781mmでした。サスペンション形式は、グランドチェロキー同様のフロント:ダブルウィッシュボーン式/リア:5リンク・リジッド式が踏襲されました。駆動方式は、「クォドラトラックⅠ」と副変速機付きの「クォドラトラックⅡ」、および電子制御式LSD付きの「クォドラドライブⅡ」の3種類のフルタイム4WDシステムのほか、2WDも設定されました。
エンジンは3種類
エンジン・ラインナップはグランドチェロキーと共通で、アメリカ本国向けとして3.7L V6SOHC(最高出力213ps/最大トルク32.5kgm)、4.7L V8SOHC(最高出力231ps/最大トルク41.8kgm)、可変シリンダーシステム採用の5.7L V8OHV(最高出力326ps/最大トルク51kgm)のガソリン3種類が用意されたほか、ヨーロッパ向け専用に3L V6ディーゼルターボ(最高出力218ps/最大トルク52kgm)が用意されました。
組み合わせられるトランスミッションは、これもグランドチェロキー同様全車5速トルコン式ATでした。また、ブレーキも同様にフロントにベンチレーテッド・ディスク式、リアにソリッド・ディスク式が採用されました。安全装備面もグランドチェロキーと同等で、SRSデュアル&サイドカーテンエアバッグシステムやEBD付きABS、横滑り装置「ESP」などが標準装備されました。
本国仕様のグレード体系は、3.7L/4.7Lエンジン搭載のベースグレードおよび「スポーツ」、4.7L/5.7Lエンジン搭載の「リミテッド」の3タイプがラインナップされました。その後2007年に、5.7Lエンジン搭載の最上級グレード「オーバーランド」が追加されました。次いで2008年、4.7Lエンジンのスペックが最高出力309ps/最大トルク46.2kgmに向上しました。
追って2009年には5.7Lエンジンも性能が向上、最高出力362ps/最大トルク53.7kgmのスペックとなりました。そして2010年をもって生産を終了、翌2011年に実質的な後継モデルとなる「ダッジ・ドゥランゴ」がリリースされました。日本市場においては、2006年5月に「リミテッド4.7」と「リミテッド5.7HEMI」の導入が開始されました。