ランチアは1936年のパリサロンで、その3年前に同社初の小型乗用車として登場した「アウグスタ」の後継モデルとなる「アプリリア」を発表しました。アウグスタで採用された先進的な設計を更に進化させ、1922年に画期的な「ラムダ」が発表された時以上のセンセーションを人々に与えました。又、創設者ヴィンチェンツォ・ランチアが翌1937年に死去した為、彼の生前最後の作品となりました。
新たに4輪独立懸架サスペンションを採用
ボディはアウグスタ同様フルモノコック構造で、センターピラーレスと観音開き式ドアも踏襲されました。スタイリングは、1920年代の面影を残す角ばったボディ形状のアウグスタに対し、空力特性を追求したモダンなフォルムとなり、Cd値は当時としては優秀な0.47を実現していました。ボディサイズは全長3,995mm×全幅1,500mm×全高1,455mmで、アウグスタよりもワイド&ローなディメンションとなりました。
ホイールベースは延長されると共に、2種類の仕様(2,750mmと2,850mm)が設定されました。又、トレッドは前後共1,286mmで、アウグスタよりもワイド化されていました。車両重量は30kg増加した880kgでした。サスペンション形式は、フロントはラムダ以来のスライディングピラー/コイルスプリング式による独立懸架を踏襲し、リアはそれまでのリジッド/リーフ式からトレーリングアーム/リーフ式による独立懸架に改良されました。
エンジンは、ラムダ以来の伝統となった挟角V4 SOHC方式を採用し、「ティーポ97」と呼ばれる初期型の排気量は1.4L(1,351cc)でした。スペックは、ゼニス製シングルキャブレターを装備し最高出力47ps/4,000rpmを発生、これはアウグスタに搭載された1.2Lエンジンを12HP上回るものでした。アウグスタ同様4速MTを介して後輪を駆動し、最高速度は125km/hに達しました。
リアブレーキはインボード式に進化
又、4輪ドラム式のブレーキはリアがインボードマウントとなり、ステアリング形式はアウグスタ同様のウォーム&セクター式が踏襲されました。そして1939年にマイナーチェンジが実施され、シリーズⅡへと進化しました。エンジンがボア・ストローク共に拡大され1.5L(1,486cc)となり最高出力が49ps/4,300rpmに向上、それに伴い最高速度も129km/hに向上しました。
同時に、ホイールベースを2,950mmに延長したロングホイールベース仕様が追加された他、電装系統がそれまでの6Vから12Vに変更されました。その後、第二次世界大戦を挟んで生産が継続されたものの、後継モデルの「アウレリア」がデビューする前年の1949年に生産終了となりました。