ランチアは、コンパクトカーの初代「デルタ」を発表した3年後の1982年、それをベースとした派生モデル「プリズマ」をリリースしました。2ボックスの5ドアハッチバックボディであったデルタに対し、プリズマは3ボックスの4ドアセダンボディを纏っていました。プラットフォームはデルタと共通ながら、実用性重視の性格でデルタのような高性能バージョンの設定はありませんでした。
デルタから全長を延長
ボディのデザインはデルタ同様、ジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインにより手掛けられ、派生モデルとは思えない程違和感なく、かつ落ち着いたなスタイリングに纏められていました。ボディサイズは全長4,180mm×全幅1,620mm×全高1,385mmで、全長がデルタよりも285mm延長された一方、ホイールベースは同一の2,475mmが踏襲されました。
車両重量は初期型で950~1,030kgで、同一エンジン搭載のデルタと比較すると、むしろ僅かながら軽量化されていました。サスペンション型式は4輪ストラット式を踏襲し、駆動方式もデルタ同様に当初はFFのみの設定でした。発売当初用意されたエンジンは、デルタと共通の1.3L直4SOHC、1.5L直4SOHC、1.6L直4DOHCのガソリン3ユニットに、1.6L直4SOHCディーゼルを加えた4種類でした。
最高出力・最大トルクはそれぞれ76ps/10.7kgm、86ps/12.5kgm、109ps/13.9kgm、65ps/12.1kgmで、トランスミッションは5速MTと3速トルコン式ATが設定されました。一方インテリアは、デルタと異なるシックなデザインのインパネと、ゼニア製の生地を用いたシートが採用されていました。そして1984年に、1.9L直4SOHCディーゼルターボエンジン(最高出力81ps/最大トルク17.5kgm)搭載車が追加されました。
M/Cで4WD車を追加
次いで1986年にマイナーチェンジを受け、フェイスリフトと共にインパネがデルタと共通のデザインに変更されました。同時に、1.6L車のエンジンがフューエルインジェクション仕様に変更されると共に、グレード名が「1600i.e」となりました。そして最大のトピックとなったのが、プラズマ初のフルタイム4WDモデル「インテグラーレ」の追加でした。
同年デルタに追加された「HF4WD」が2L直4DOHCターボエンジンを搭載するのに対し、こちらは同一排気量ながらNA仕様で、スペックも最高出力115ps/最大トルク16.6kgmという大人しいものでした。それでも、1,180kgまで増加した車体を最高速度184km/hまで引っ張り上げる動力性能を備えていました。
4WDの方式はデルタHF4WDと同様のビスカス式を採用する一方、リアディファレンシャルに機械式ロック機構が追加され、生活4WDとしての性能向上が図られていました。プリズマの生産は、1989年に後継モデル「デドラ」が登場した為、ベースモデルのデルタよりも早く終了となりました。日本市場には、1.5L/1.6L/2Lの各ガソリンモデルが導入されました。