フィアット・グループは1982年3月に開催されたトリノ・ショーにおいて、ランチア・ブランドよりWRCのグループBに参戦するためのホモロゲーションモデル、「ラリー」を発表しました。ライバルのアウディがすでにフルタイム4WD方式を採用していたのに対し、「ランチア・ストラトス」で実績のあった手堅いミッドシップレイアウトが採用されました。
デザインはピニンファリーナが担当
車名はラリーが正式な名称であったものの、競技名との混同を避けるため通称037ラリーと呼ばれました。プラットフォームは「ランチア・ベータ・モンテカルロ」用のセンターモノコックをベースに、前後にチューブラーフレームを追加したものが用いられました。ボディタイプは2ドアクーペで、エクステリア・デザインはカロッツェリア・ピニンファリーナの手に委ねられました。
そのスタイリングは、エアロダイナミクスとたくましさを兼ね備えたものでした。ボディサイズは全長3,915mm×全幅1,850mm×全高1,245mmというショート&ワイドなもので、ホイールベースは2,440mmに設定されていました。また、車両重量は1,170kgでした。
ランチア ラリー 037の外観動画
ランチア ラリー 037のラリー走行シーン
エンジンはアバルト製を採用
エンジンは、アバルトがこのモデルのために開発した2L直4DOHC16バルブ・ルーツ式メカニカル・スーパーチャージャー仕様が搭載されました。ロード・バージョン「ストラダーレ」にはウェーバー40DCNVH15/250キャブレターが1基装着され、7.5:1の圧縮比から最高出力208ps/7,000rpm・最大トルク23kgm/5,000rpmのアウトプットを発生しました。
トランスミッションはZF製の5速MTが組み合わせられ、最高速度220km/h、0-400m加速タイム15sというパフォーマンスを発揮しました。サスペンション形式は前後ともダブルウィッシュボーン/コイル式で、フロントにはスタビライザーが備わっていました。また、ブレーキは前後ともにベンチレーテッド・ディスク式が装備されました。
LSDを装備
ホイール&タイヤはフロントに8J×16インチホイール+205/55VR16タイヤ、リアに9J×16インチホイール+225/50VR16タイヤの組み合わせが装着されました。また、リアデフにはリミテッドスリップデフが装備されていました。一方インテリアは、水平基調のインパネに7眼式メーターが備わるほか、Aピラーやサイドシルにロール・ケージが組まれていました。
WRCにおいては、当初「アウディ クワトロ」と互角の戦いを繰り広げたものの、のちに劣勢に立たされたため、排気量を2.1Lに拡大した改良版「エボリューションⅡ」が投入されました。ラリー037はコンペティション仕様を含め全部で200台余りが生産され、日本にもその一部が並行輸入されました。
ラリーシーンでのライバル:アウディ クワトロ
ラリーで活躍したランチャと言えば:ランチャ ストラトス