フォード・モーターは1993年に、リンカーン・ブランドより「コンチネンタルマークⅦ」の後継モデルとなる新型ラグジュアリークーペ、「マークⅧ」を発売しました。従来から一新された「フォード・FNプラットフォーム」に架装されるボディはフルサイズで、コンピューターを用いたマルチインフォメーションディスプレイをはじめとする充実した装備が特徴でした。
優れた空力特性を実現
ボディタイプは2ドアクーペのみの設定で、エクステリア・デザインは角張ったコンチネンタルマークⅦから一転し、曲線基調の流麗なものとなりました。同時に空力特性向上にも注力され、Cd値は0.33という優れた数値を実現していました。ボディサイズは全長5,255mm×全幅1,895mm×全高1,360mmで、全高をのぞきコンチネンタルマークⅦから一回り拡大されました。
また、ホイールベースも100mm以上延長され2,870mmとなりました。一方、車両重量はコンチネンタルマークⅦと同等の1,702kgに抑えられていました。駆動方式はFRを踏襲し、エンジンは4.6L V8DOHCの「インテック」(最高出力284ps/最大トルク39.4kgm)が搭載されました。トランスミッションは4速トルコン式ATが組み合わせられ、最高速度215km/hの性能を発揮しました。
サスペンション形式はフロントがマクファーソンストラット式、リアが4リンク式+エアスプリングで、ブレーキは前後ともにベンチレーテッド・ディスク式が装備されました。また、ステアリング形式はロック・トゥ・ロック2.6回転のバリアブルレシオ・ラック&ピニオン式が採用されました。
上級グレードや限定車を追加
装備面では、オートライトやヒーター付電動ドアミラー、オートエアコン、レザーシート&前席パワーシート、キーレスエントリー、クルーズコントロールなどが標準で備わりました。その後、1995年にインパネの意匠に小変更が施されるとともに、4.6Lエンジンのアウトプットを最高出力294ps/最大トルク40.8kgmまで高めて搭載する上級グレード「LSC」が追加されました。
次いで1996年に、トラクションコントロールやJBL製オーディオシステム、車載電話などが装備されるリンカーン75周年記念パッケージオプション「ダイヤモンド・アニバーサリー・パッケージ」が設定されました。追って1997年にはフェイスリフトが実施され、フロントまわりとリアまわりの意匠が刷新されました。
同時に、全車にトラクションコントロールとHIDヘッドランプが標準化されたほか、LSCはスタビライザー強化による操縦安定性の向上が図られました。そして翌1998年をもって生産を終了、リンカーンのラグジュアリークーペの系譜は途絶えることとなりました。マークⅧは、日本でも1993年から正規輸入販売が開始されたものの、フェイスリフト版が導入されることなく1996年をもって販売終了となりました。