ポルシェAGは1996年、前年に生産を終了した「968」の後継モデルとなる新型オープン2シータースポーツカー「ボクスター(986型)」を発売しました。FR方式を採用していた968と異なり、1976年に生産終了となった「フォルクスワーゲン・ポルシェ914」以来20年ぶりのミッドシップレイアウトが採用されました。
電動リアスポイラーを装備
ビニール製リアウィンドウの電動ソフトトップが備わるボディは、エンジン・レイアウトの変更などにともない968からプロポーションが大きく変わりました。また、ヘッドランプはポップアップ式を廃し固定式となった一方、リアエンドにはポップアップ式の電動スポイラーが装備されました。空力特性に優れ、Cd値は0.31を実現していました。
ボディサイズは全長4,315mm×全幅1,780mm×全高1,290mmで、968から全幅と全高が若干拡大されました。また、ホイールベースはわずかに長い2,415mmに設定されました。車両重量は1,250kgで、同じオープンボディの「968カブリオレ」との比較では190kgもの軽量化を果たしました。サスペンション形式は、968や兄貴分の「911」と異なり前後ともにマクファーソンストラット式が採用されました。
2.5L水平対向6気筒エンジンを搭載
また、968ではフロントのみに装備されたベンチレーテッド型ディスクブレーキが、リアにも採用されました。エンジンは968から一新され、当初2.5L水平対向6気筒DOHC NA「バリオカム(可変バルブタイミング機構)」仕様(最高出力204ps/6,000rpm・最大トルク25kgm/4,500rpm)が搭載されました。
組み合わせられるトランスミッションは5速MTまたはマニュアルモード付5速トルコン式AT「ティプトロニック」で、前者を選んだ場合のパフォーマンスは最高速度240km/h・0-100km/h加速6.9sでした。安全装備面では、SRSデュアルエアバッグシステムとABSが標準で備わるほか、オプションでトラクションコントロールが設定されました。
マイナーチェンジで排気量を拡大
その後、1999年の仕様変更で内装の質感向上やSRSサイドエアバッグシステムの標準化が図られるとともに、排気量が2.7Lに拡大されアウトプットが最高出力220ps/6,400rpm・最大トルク26.5kgm/4,750rpmに向上しました。同時に、3.2L水平対向6気筒DOHC NAエンジン(最高出力252ps/6,250rpm・最大トルク31.1kgm/4,500rpm)+6速MTまたは5速ティプトロニックを搭載する高性能版「ボクスターS」が追加されました。
MT仕様のパフォーマンスは、ボクスターが最高速度250km/h・0-100km/h加速6.6s、ボクスターSが最高速度260km/h・0-100km/h加速5.9sでした。次いで2002年に実施された仕様変更では、バリオカムが切替式から連続可変式に改良され、ボクスター/ボクスターSともに最高出力が8ps向上しました(ボクスターSは最大トルクも0.5kgm向上)。
続いて2003年、「550スパイダー」デビュー50周年記念限定モデルとして、専用の内外装を奢ったボディに3.2L水平対向6気筒エンジンの最高出力を266ps/6,200rpmまで高めて搭載する「ボクスターS 550スパイダーエディション」が設定されました。そして2004年にフルモデルチェンジが実施され、2代目987型に移行しました。
後継モデル:2代目ボクスター