1906年に創業したイタリアの自動車メーカー、ランチアは、翌1907年に市販モデル第一弾となる「アルファ」を発売した後、1909年以降「ベータ」「ガンマ」「デルタ」「ゼータ」「シータ」と毎年のようにニューモデルをリリースし続けました。そしてシータの発売から6年後の1919年に、シータをベースに改良を加え、近代化を図った後継モデル「カッパ」が登場しました。
下回りはシータと共通
フレームはシータ同様のペリメーター型で、サスペンション形式もリアにトルクロッドが備わる4輪リジッド・リーフ式が踏襲されました。ボディサイズは全長4,660mm×全幅1,555mmで、シータより全長が10mm長く、全幅は60mm狭いディメンションでした。ホイールベースは、3,100mmと3,378mmの二つの仕様が用意されたシータとは異なり、3,388mmで統一されました。
トレッドは前後共に1,330mmで、ボディの全幅は縮小されたもののシータと同一の数値でした。一方車両重量は240kg重くなり、1,300kgとなりました。又、フロントにはブレーキが備わらず(当時はそれが一般的)、リアのみにドラム式ブレーキが装備される点もシータと同様でした。駆動方式は、コンベンショナルなFRが踏襲されました。
当初搭載されたエンジンは、シータと同一のボア×ストロークを持つ4.9L直4SV(サイドバルブ)方式で、キャブレターは自社製からゼニス製に変更されたものの、70HP/2,200rpmの最高出力は同一でした。又、トランスミッションも各ギアレシオが共通の4速MTが踏襲された一方、ファイナルレシオのみ3.26から3.467へと低められていました。
構造面では大きく進歩を遂げ、それまで一体式だったシリンダーとシリンダー・ヘッドが別体式になると共に、初めて電動式セルフスターターが装備され、車外に設けられていたシフトレバーが車体中央に移されるなど、より近代的な仕様となっていました。又、タイヤサイズはシータの835×135から895×135へと変更されました。
高性能版を追加
そして1921年に、エンジンをOHV方式に改め、最高出力を87HP/2,300rpmまで向上させたスポーティモデル「35HPディカッパ」が登場しました。このモデルの最高速度は130km/hに達しました。更に翌1922年には、同社がパテントを持つV型シリンダーレイアウトに加え、SOHC方式を採用した4.6L 8気筒エンジン(最高出力98HP/2,500rpm)を搭載するプレミアムモデル「40HPトリカッパ」がリリースされました。
そして同じ年に、モノコックボディとフロント独立懸架サスペンションを持つ革新的なニューモデル「ラムダ」がデビューしたものの、カッパシリーズの生産も暫くの間並行して行われました。生産終了となったのは、それから3年後の1925年の事でした。