ロールス・ロイスは1975年、「コーニッシュ」のさらに上級に位置する高級パーソナルクーペ「カマルグ」を発売しました。プラットフォームやメカニカル・コンポーネンツはコーニッシュおよび「シルヴァーシャドウ」からの流用であったものの、ボディは戦後のロールス・ロイス車として初めて外注によるデザインが採用されました。
ワイド&ローなフォルム
デザインの外注先は、カロッツェリア・ピニンファリーナに所属していたパオロ・マルティンでした。ボディタイプはコーチビルダーのミュリナー・パーク・ウォード社の手により架装される2ドア・フィクスドヘッドクーペのみの設定で、コーニッシュに設定のあったオープンボディの2ドア・ドロップヘッドクーペは製造されませんでした。
しかしながら、アフターマーケットにより一部がドロップヘッドクーペに改造されました。スタイリングは、直線基調のシャープなボディラインや7度の傾斜が付けられたフロントグリル、側面までまわり込んだデザインのウィンカー&スモールランプなど、コーニッシュとは全く異なる造形を備えていました。
ボディサイズは全長5,170mm×全幅1,920mm×全高1,470mmで、コーニッシュから全幅が90mmほどワイド化された一方、全高は20mmほど低められていました。ホイールベースはコーニッシュと共通の3,048mmで、車両重量は2,370kgでした。サスペンション形式は、フロント:ダブルウィッシュボーン/コイル式・リア:セミトレーリングアーム/コイル式による4輪独立懸架が踏襲されました。
190km/hオーバーの最高速度を実現
駆動方式はコンベンショナルなFRを踏襲し、エンジンも6,750ccV型8気筒OHVがキャリオーバーされました。圧縮比は9:1、キャブレターは当初はSU製で、コーニッシュよりもアウトプットの強化が図られていたものの、最高出力の数値はそれまでと同様同社のポリシーに則り公表されませんでした。
のちに、キャブレターがソレックス製に変更されました。トランスミッションはコーニッシュ同様のGM製3速AT「ターボ・ハイドラマチック」が組み合わせられ、最高速度192km/h・0-60mph加速10.9sの性能を発揮しました。また、ブレーキもコーニッシュ同様にフロントがベンチレーテッド型、リアがソリッド型の4輪ディスク式が採用されました。
その後1977年に、コーニッシュとともにステアリング形式が「シルヴァーシャドウⅡ」譲りのラック&ピニオン式に変更され、さらに1979年にはリア・サスペンションが刷新されました。そして1986年に総生産台数526台をもって生産を終了、後継モデルのリリースはなく1代限りでカマルグの名は消滅しました。