1955年にリリースされたロールス・ロイスの高級乗用車「シルヴァークラウド」は、1962年に実施された3年ぶり2度目のビッグマイナーチェンジにより「シルヴァークラウドⅢ」に移行しました。シャシーやパワートレインなど基本メカニズムに大掛かりな変更はなかったものの、内外装デザインが刷新され、特にエクステリア面では大幅なイメージチェンジが図られました。
フロントまわりの造形を一新
ボディタイプは、従来同様ロールス・ロイス自身の手により架装される4ドアセダンを主力としながら、コーチビルダーの手により2ドアクーペや2ドアコンバーチブル、4ドアコンバーチブルなどのさまざまなボディが制作されました。それらのエクステリアは、フロントフェンダーやボンネットフードの造形が変更されるとともに、ラジエーターグリルが小型化されていました。
さらに、ヘッドランプが2灯式から4灯式に変更されたほか、その両サイドにウィンカーランプおよびスモールランプが装備されるなど、フロントマスクのイメージは一新されました。一方、ラダーフレーム式を踏襲するシャシーは、それまでと同様に標準ホイールベース仕様とロングホイールベース仕様の2種類が設定されました。
ホイールベースの数値は前者が3,124mm、後者が3,226mmで、いずれも従来から変更はありませんでした。ボディサイズは全長5,372mm(標準ホイールベース仕様)/5,480mm(ロングホイールベース仕様)×全幅1,899mm×全高1,626mmで、実質的にシルヴァークラウドⅡと同等でした。駆動方式も、コンベンショナルなFRが踏襲されました。
一方エンジンは、オールアルミニウム製の6,227ccV型8気筒OHVをキャリオーバーしながらも、圧縮比が8:1から9:1に高められハイオクガソリン仕様となったほか、真空進角ディストリビューターの採用などの改良が加えられていました。また、2基のSUキャブレターは1.75インチから2インチへと大径化が図られていました。
最高速度は187km/h
従来同様の4速ATとの組み合わせによる最高速度は187km/hで、シルヴァクラウドⅡからわずかながらも向上を果たしていました。また、加速性能にも優れ、0-60mph加速は10.8s、0-400m加速は17.7sでした。サスペンション形式は従来から変更はなく、フロントにコイルスプリングを用いた独立懸架式が、リアにリーフスプリングを用いたリジッド・アクスル式が採用されました。
また、4輪ドラム式のブレーキ形式や、8.20-15サイズのタイヤなども従来から変更はありませんでした。そして1965年に10年ぶりとなるフルモデルチェンジが実施され、「シルヴァーシャドウ」に移行しました。総生産台数はシルヴァークラウドⅡよりも少ない2,297台で、そのうちコーチビルダーによりボディが架装された個体は375台でした。