1939年の第二次世界大戦の勃発にともない一般向け乗用車の生産を中止していたロールス・ロイス社は、大戦終結後の1947年に戦後初のニューモデルとなる「シルヴァーレイス」をリリースしました。戦前に発売された「レイス」がベースとなっていたものの、随所にコストダウンを目的としたダウングレードが施されていました。
スタイリングを一新
戦前のモデル同様に、ロールス・ロイス社からはシャシーとメカニカル・コンポーネンツのみが供給され、ボディの架装はコーチビルダーにゆだねられていました。架装されたボディの大半は、4ドアセダンでした。スタイリングは、当初はレイスの流れをくむクラシカルなものであったものの、のちにフェンダーやヘッドランプがボディと一体化されるなど近代化が図られました。
シャシーは標準ホイールベース仕様(3,226mm)のほか、ロングホイールベース仕様(3,376mm)も用意されたものの、後者でもレイスからは短縮されていました。標準ホイールベース仕様のボディサイズは全長5,232mm×全幅1,854mmで、レイスとの比較では全長は同一ながら全幅が若干拡大されていました。トレッドは前後とも1,524mmで、わずかにワイド化されていました。
サスペンションやエンジンをダウングレード
サスペンションは、レイス同様のフロント:ダブルウィッシュボーン/コイル独立懸架式、リア:リジッド・リーフ式の形式を踏襲しながらも、構造面で変更が施されたほか、前後に設けられていた自動ダンピングコントロール機構は、リアに手動ダンピングコントロールが備わるのみにダウングレードされました。
駆動方式はコンベンショナルなFRが踏襲され、エンジンはレイスと同じ排気量4,257ccの直列6気筒ながら、OHVクロスフロー方式から吸気側がOHV、排気側がSV(サイドバルブ)の「oise」方式へとダウングレードが行われていました。また、鋳鉄製シリンダー・ブロック+アルミニウム製クランクケースによる2ピース構造が採用されていたレイスに対し、総鋳鉄製のワンピース構造に変更されました。
トランスミッションは、当初は2速以上にシンクロメッシュが備わる4速MTのみの設定でした。ブレーキは、レイスでは前後ともメカニカルサーボ付きの4輪ドラム式が採用されたに対し、前輪用のサーボが油圧式へとここではアップグレードが行われていました。タイヤサイズは6.50-17で、レイスと同一でした。
その後1951年に排気量が4,566ccに拡大され、翌1952年にはGM製の4速オートマチック・トランスミッションがオプション設定されました。さらに1954年には排気量が4,887ccまで拡大されるとともに、ツイン・キャブレター化されました。そして1959年をもって生産を終了、シルヴァーレイスの車名は以降18年間途絶えることとなりました。