ロールス・ロイスは1980年、1977年に発売した「シルヴァーシャドウⅡ」に代わる主力高級セダン「シルヴァースピリット」をリリースしました。プラットフォームやパワートレインなど基本コンポーネンツはシルヴァーシャドウⅡからのキャリオーバーであったものの、スタイリング面ではそれまでのロールス・ロイス車のイメージが一新されていました。
ボディを一回り拡大
同時にベントレー・ブランドからデビューを果たした「ミュルザンヌ」とは、プラットフォームやボディ、メカニカル・コンポーネンツを共有する姉妹車種の関係にありました。ボディタイプはシルヴァーシャドウⅡ同様4ドアセダンのみのラインナップで、エクステリア・デザインは曲線の使用を最小限に留めたシャープなボディラインや、低められたベルトラインを持つモダンなものとなりました。
また、ヘッドランプがそれまでの丸型4灯式に代えヨーロッパ仕様車には角型2灯式、アメリカ仕様車には角型4灯式が採用されたことや、サイドウィンドウに同社初のカーブド・ガラスが採用されたことも特徴でした。ボディ・ディメンションは全長5,268mm×全幅1,887mm×全高1,485mm、ホイールベース3,061mmでした。
引き続き最高出力は未発表
シルヴァーシャドウⅡからは全長・全幅が一回り拡大された一方で、全高は若干低められていました。また、車両重量はシルヴァーシャドウⅡよりも重い2,245kgでした。そのほか、入念な塗装や防塵対策が施されたことも特徴でした。駆動方式はコンベンショナルなFRを踏襲し、エンジンも6,750ccV型8気筒OHVキャブレター仕様がキャリオーバーされました。
アウトプットは大幅な強化が図られたと推定されたものの、それまでと同様同社のポリシーに則りスペックは公表されませんでした。トランスミッションは従来同様、GM製の3速AT「ターボハイドラマチック」との組み合わせでした。サスペンション形式は、セルフレベリング機構が備わるフロント:ダブルウィッシュボーン/コイル式・リア:セミトレーリングアーム/コイル式4輪独立懸架が踏襲されました。
また、ブレーキも4輪ベンチレーテッド・ディスク式が踏襲され、タイヤは235/70HR15ラジアルタイヤが装着されました。その後1986年に、キャブレターに代えボッシュ・Kジェトロニック燃料噴射システムが採用されました。そして1989年にマイナーチェンジが実施され、「シルヴァースピリットⅡ」に移行しました。
第一世代モデルの総生産台数は、ロールス・ロイス車としては非常に多い8,129台でした。