ロールス・ロイスは1998年、基本設計を1980年までさかのぼる「シルヴァースピリットⅣ」および「シルヴァースパーⅣ」に代わる新型高級乗用車「シルヴァーセラフ」を発売しました。さまざまな面で大幅なアップデートが図られ、中でもエンジンがそれまでの自社製に代わりBMW製に変更されたことが最大の変更点でした。
ボディ剛性アップとともに大幅に軽量化
ボディタイプは4ドアセダンのみの設定で、エクステリア・デザインはそれまでの直線基調から曲線を取り入れたフォルムに変貌をとげました。また、従来から65%ものボディ剛性アップを実現したことも特徴でした。ボディ・ディメンションは全長5,390mm×全幅1,930mm×全高1,515mm、ホイールベース3,116mmで、ロングボディ版のシルヴァースパーⅣに対してもすべての項目において拡大されていました。
一方で、車両重量は100kg以上軽量化され2,302kgとなっていました。駆動方式は従来同様のFRを踏襲、エンジンはそれまでの6,750ccV型8気筒OHVに代わり、5,379ccV型12気筒SOHCが搭載されました。ロールス・ロイス車がV12エンジンを搭載するのは、1936~1939年にかけて生産された「ファントムⅢ」以来およそ60年ぶりのことでした。
エンジンのスペックを公開
エンジンがBMW製となったこともあり、「十分」なパワーを持つとしか公表されなかった従来のしきたりが破られ、最高出力326ps/5,000rpm・最大トルク50kgm/3,900rpmという数値が公開されました。組み合わせられるトランスミッションはロールス・ロイス車初の5速トルコン式ATで、パフォーマンスは最高速度が225km/h、0-100km/h加速タイムが7sでした。
それまでのシルヴァースピリットⅣに対し、最高速度・加速性能ともに向上を果たしていました。サスペンション形式は、それまでのフロント:ダブルウィッシュボーン式/リア:セミトレーリングアーム式から、4輪ダブルウィッシュボーン式に変更されました。また、油圧式アクティブダンパーが採用されたことも特徴でした。
そのほか、従来はブレーキはフロントのみだったベンチレーテッド式ディスクが、リアにも採用されました。安全装備面では、引き続きSRSデュアルエアバッグシステムやABSが装備されたほか、新たにトラクションコントロールが採用されました。その後1999年のマイナーチェンジでフロントのウィンカーレンズがオレンジからクリアに変更されるとともに、DVDカーナビゲーションシステムが装備されました。
次いで2001年には、ホイールベースをストレッチしたリムジン型派生モデル「パークウォード」がリリースされました。そして翌2002年をもって、シルヴァーセラフ/パークウォードともに生産終了となりました。