1906年に正式に創立されたイギリスの高級車メーカー、ロールス・ロイスは、1925年5月に新型乗用車「ニューファントム」を発表しました。基本設計を創立年までさかのぼり、4半世紀にわたり生産が続けられてきた「シルヴァーゴースト40/50HP」の後継モデルで、保守的な設計を踏襲しながらもパワートレインの刷新が図られていました。
大型化されたボディ
シャシーは、基本的にシルヴァーゴースト後期型からのキャリオーバーでした。また、コーチビルダーにより架装されるボディは、フィクスドヘッドのリムジンが主力となっていたものの、引き続きオープンボディのカブリオレなども用意されました。ボディサイズは全長5,563mm×全幅1,829mmで、シルヴァーゴーストから大幅に巨大化されました。
ホイールベースは3,645mmの標準仕様のほか、3,721mm(アメリカ向け輸出仕様)/3,823mm(イギリス国内仕様)のロングホイールベース仕様が設定されました。また、車両重量はシルヴァーゴーストから大幅に増加し、標準的なパーカー製リムジンでおよそ2,700kgに達しました。駆動方式はコンベンショナルなFRが踏襲され、エンジンは新開発された7,668cc水冷直列6気筒12バルブ仕様が搭載されました。
OHV方式採用により性能が向上
シルヴァーゴースト用ユニットから排気量が拡大されたばかりでなく、旧式なSV(サイドバルブ)方式からOHV方式に改められたことが特徴でした。1基の自社製キャブレターから発生する最高出力は96hp/2,750rpmであったものの、同社のポリシーにより「十分」な出力を持っていると表記されるに留まりました。
トランスミッションはセンターチェンジ式で、国内仕様には4速、アメリカ仕様には3速のギアボックスが組み合わせられました。最高速度は、シルヴァーゴーストを大幅に上回る128km/hに達しました。サスペンション形式は、フロントに半楕円リーフスプリング、リアにカンチレバー・リーフスプリングが備わる4輪リジッド・アクスル式でした。
ステアリング形式はウォーム&ナット式で、ブレーキはシルヴァーゴースト後期型同様メカニカルサーボ付きの4輪ドラム式が装備されました。また、ホイール&タイヤは前後とも6.75×21ホイールと7.00×21タイヤの組み合わせで、従来よりも太いものとなりました。その後1928年に、シリンダーヘッドが鋳鉄製からアルミニウム製に変更されました。
そして翌1929年に後継モデルの「ファントムⅡ」が登場、ニューファントムは車名を「ファントムⅠ」に変更したうえで並行販売されたものの、1931年をもって生産終了となりました。