EV(電気自動車)は、局所的に排気ガスを排出しない低公害性を最大の特徴とし、ガソリン車やディーゼル車に代わる次世代の乗用車として期待されて来ました。日本においては、1950年代から70年代初頭に掛けての高度経済成長期には、EVに関する目立った動きはありませんでした。
1970年代半ばにもEVリリースが相次いでいた
その後、1970年代半ばにオイルショックが起きると、石油資源に頼る事のリスクが明確になりました。又、その直後に排気ガス規制が実施された事も重なり、そうした事態への対策として各社から次々とEVがリリースされました。しかし、当時のEVに搭載されていた鉛バッテリーはエネルギー密度が低く、航続距離がごく短かった為、実用車としては甚だ不完全な物でした。
具体的な例を挙げると、マラソンの中継車として採用されたEVが、走者と併走しギリギリ42.195kmを走破出来る程度の性能でした。その後、1980年代から90年代に掛けて登場したEVは、走行用バッテリーとしてエネルギー密度が鉛式よりも高いニッケル水素式や、更に高性能なリチウムイオン式が搭載されるようになり、航続距離が伸びました。
とは言え、車両価格が同クラスのガソリン車の2倍以上と極めて高価なうえ、充電インフラの整備も行われなかった為、実用車としての問題点は抜本的には改善されませんでした。その為、一般ユーザーには殆ど受け入れられず、一部法人ユーザーが利用するに留まりました。
リチウムイオンバッテリーによって変わったEVの世界
しかし、現在ではそうした状況も、ある程度改善されています。現在市販されているEVは、リチウムイオンバッテリーの更なる高性能化に伴い、かつての2倍前後かそれ以上の航続距離を確保出来るようになりました。又、EV生産メーカーである日産や三菱が販売店を充電スポットとして提供する等、充電インフラの整備も進んでいます。
しかし、一部の高級EVを除けば、航続距離が改善されたと言っても200km以下に留まり、長距離ドライブには不向きな性能に留まっています。又、充電インフラも、ガソリンスタンドと比較するとまだまだ不十分で、出先での充電には課題を残しています。
レンジエクステンダーEVという合わせ技も
更に、急速充電器を使用すると、バッテリーの寿命を縮める問題点もあります。EVにはこうした欠点がある為、それ1台で全ての用途を賄う事は難しく、主に自宅で充電して近隣用として利用する用途に限られるのが現状です。一方、バッテリーを充電する為の発電用エンジンを搭載した、いわゆるレンジエクステンダーEVが、純粋なEVの弱点を解消する方式として注目されています。
ただし、ゼロエミッションというEV最大のメリットを失うと共にコストも高くなる為、痛し痒しの側面が残ります。結局のところ、EVがガソリン車やディーゼル車に全面的に取って代わる為には、余程画期的な高性能バッテリーが開発されない限り、困難であると言えます。むしろ、方向性としては、車両価格の低減化を推し進め、セカンドカーとしての普及を図る方が現実的と言えるかもしれません。